この映画は「勇敢な王子と可憐な姫」だったり「闘う男たちと守られる女たち」といった前時代的な物語ではない、と冒頭ではっきりと前置きされる通り、搾取される立場に甘んじてきた女性の主人公 (と他の女性たち) がいかにしてその逆境を乗り越えるか、というところにフォーカスされたファンタジー映画だった。
ジェンダー問題についての旧来的な価値観の打破を目的としたフェミニズム的な思想が含まれた脚本なのだろうと思うが、そういったテーマを持つ物語の主役と製作総指揮を、次代のスターになるであろうミリー・ボビー・ブラウンが担っているというところが (メタ的な見方にはなってしまうが) 象徴的。
主人公の様々な感情がミリーによって充分に表現されていて、その成長と内面のドラスティックな変化も明快に描かれている。
脇を固める俳優達も、やや書き割り的ではあるが、それぞれの役割をしっかりと演じていて、物語としてきちんとまとまっていた。
ただ、終盤にかけて少し脚本と場面転換がガチャついた印象があり、何か事情があってかなり端折ったのかな? という想像をしてしまった。
個人的には、いち映画好きとしては何より面白い映画体験ができることが重要で、ジェンダーだったりフェミニズムだったりの議論について極端な思想は持たない (性別不平等などなくなった方がいいに決まっている) ようにしているのだが、映画そのものの体験よりもその思想的な部分が強く感じられ過ぎると、やや説教をされているような気持ちになってしまって冷めてしまうな… というのが、正直な感想だった。
この作品のように冒頭から製作者達のスタンスをメタ的に表明したりせずとも、女性が前時代的な価値観にとどまらず、なんなら男性を圧倒するほど活躍する名画が、これまでにもたくさん作られてきている。
作品として面白ければ、登場人物達の性別や人種は、個人的には全く関係がない。
といった話はさておき…
ミリー・ボビー・ブラウンは、次代の価値観をその演技で体現し世界へ啓発していく、とても重要な存在になっていくのだろうと確信した。
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