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宇宙人のあいつのnetfilmsのレビュー・感想・評価

宇宙人のあいつ(2023年製作の映画)
3.3
 まぁ何とも論じようがない映画というか、荒唐無稽なショート・コントを2時間分作って繋げました的な映画。というかこれが映画として撮られるべきなのかという疑問も必然的に湧いて来る。これならテレ東の深夜に帯番組で良いでしょと。監督の飯塚健は『野球部に花束を』や『ヒノマルソウル 舞台裏の英雄たち』、『虹色デイズ』などである程度認知度はあるのだろうが、最近結婚してしまった中村倫也ありきで何か映画が撮れないかという問いは在るものの、世に打って出るような物語は見つけられなかったからこんなの作りました的な緩さで。何というか最近の日本映画にはこの映画の様に起承転結がない映画が増えた。2時間ずっと緩い空気だけの映画で、まったく顔の似ていない兄弟の中には実は宇宙人がいて、結論から言えば真田家の四兄妹の次男・日出男として23年間暮らしていた中村倫也が土星人だという設定で、彼の帰還まで1ヶ月と迫るものの実は土星には家族のうちの誰か1人を連れて行かなければならない格好になる。当然、日出男に誰か1人を指名する勇気などなく、そうこうしているうちに旅立ちの日の数日前になりという何かざっくりとした枠組みはあるのだが、それ自体は別に短編でやれば良いだけの話で、2時間のうちの多くの時間は3兄弟の脱線する姿に時間を割いている。それが前述のコント的と評した1番の理由となる。

 四国・高知の穏やかな土地で繰り広げられる穏やかで緩い家族映画と呼べばわかり易いか?両親は既に他界し、長女・想乃(伊藤沙莉)と三男・詩文(柄本時生)の親代わりとして長男・夢二(日村勇紀)の昭和的な男らしさが発揮されると言えば良いか?彼が開業する焼き肉店のロケーションはなかなかユニークだが、一向に物語は進行せず、家族愛を感じる描写も残念ながら希薄で、殆ど朝食の場面の唐突な家族会議を全員1回ずつバトンする流れなのだ。この日常のルーティンはお椀に入れた納豆を1人ずつ茶碗に盛るのがユニークなのだが、正直言って何の伏線にもなっておらず、ただエピソードを羅列するだけに留まる。長女・想乃の自己中な彼氏との結婚・妊娠問題や三男・詩文の昔のいじめ加害のエピソードも扱っているものの、それを中村倫也扮する宇宙人が超能力で何とかするというアイデアそのものが馬鹿っぽい。何というか馬鹿に振り切れているなら最後まで馬鹿になればある種清々しいのだが、中村倫也くんの「ごめん、てへ」っ的な可愛さにバナナマン日村の独走ゆるふわワールドを足して、そこに日本映画で定評のある演技派の若手2人さえ出していれば映画は成立するという配給側の思いの上滑りが大変痛々しい。深夜ドラマのような30分コントを4つ足したとて上質な映画にはならない。コントにおける舞台慣れと映画における演技は一見似ているようだがまったくの別物だろう。
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