sowhat

ホーリー・トイレットのsowhatのレビュー・感想・評価

ホーリー・トイレット(2021年製作の映画)
4.0
【水しぶき、香りなどが楽しめる4Dシアターでの鑑賞がおすすめです!】

舞台は工事現場の仮設トイレ。
登場人物は頭の薄い中年男、建築家のフランク。
彼はなぜか、横倒しになったトイレの中に閉じ込められている。
頭から血を流し、右前腕には鉄筋が貫通している。

外から聞こえてくる音で、徐々に状況が飲み込めてくる。
今日はどうやら市長ホルスとが主導する再開発リゾート施設の建設イベントで、多くの客が招かれている様子。
そして30分後にそのイベントの一環として、このトイレ周辺が爆破されるらしい。
フランクは、主賓の一人として招待されていた様子。
おそらくリゾート施設の設計を請け負ったのだろう。

脳震盪でぼんやりした頭が、徐々に記憶を取り戻す。
大仕事で調子に乗っていたフランクは、恋人に冷たくあたっていたことを思い出す。
スマホは便器の奥に落ちており、外部との連絡手段もない。

ここから観客は男の必至の脱出劇を見守ることになる。
当然ことはうまく進まず、男が足掻けば足掻くほど、事態は悪化していく。
肉がえぐられる痛みと他人の糞尿にまみれる汚さを想像し、つい笑いを漏らしてしまう。
こんなひどい(ほめてる)脚本を書き、汚い(ほめてる)映画にしたルーカス・リンカー監督に拍手したくなる。

一人無人島に取り残された「キャスト・アウェイ」ではバレーボール「ウィルソン」が心の友(imaginary friend)だったが、本作では便器のフタ。
ロッククライミング中に岩の間に腕を挟み動けなくなった「127時間」では潔く腕を諦めたけど、本作ではなかなか踏ん切りがつかない。
刻々と爆破の時間は迫り、男はクソまみれになりながら虚しく足掻き続ける。

これは人ごとではない。
彼の姿は私たちに、人間存在の愚かさ、はかなさ、人生の無常さを改めて教えてくれる。
そして窮地に陥って初めて見えてくる真実や愛のことも…。

傲慢で調子こいた頭の薄い中年男が、クソまみれになりながら真実の愛に目覚める物語です。
水しぶき、香りなど、映像にあわせてさまざまな演出を仕掛けることで、映画への没入感を高める最新の上映システム4Dシアターでの鑑賞がおすすめです!
sowhat

sowhat