Max

アイルトンセナ 〜音速の彼方へのMaxのレビュー・感想・評価

5.0
僕の心の中にぽっかりと穴が開いている。憧れ追い求めた貴方がサーキットからいなくなったあの時から…

1994年F1世界選手権、イタリア・サンマリノGP
この年のレースウィークは、目に見えぬ何かに支配されているようだった。

4月29日、金曜日の予選。
ルーベンス・バリチェロがヴァリアンテ・バッサ・シケインで金網に激突。幸い命に別状はなかった。

4月30日、土曜日の予選。
ローランド・ラッツェンバーガーがヴィルヌーヴ・カーブを曲がりきれずウォールに正面から激突。
新人の彼は、F1の世界を全て見ることなく帰らぬ人となった。

5月1日、日曜日。
暗雲が漂う中、サンマリノGP本戦が開幕した。
スタート直後、J・Jレートの乗るベネトン・フォードに、ぺトロ・ラミーが乗るロータス・無限ホンダが追突しレースが赤旗中断。
ペースカーが入り、コース上に散らばった破片がクリアになるまでスローで周回を重ねていた。

この時、イモラの魔物が三度(みたび)牙を剥くことなど、誰も予想だにしていなかった。

5周目の時点でペースカーが退き、再スタート。
7周目、ホームストレートを駆け抜けていったウィリアムズ・ルノー。
僕はトップを行く貴方の走りを一挙手一投足見守っていた。

僅差で猛追するベネトン・フォードを後目にタンブレロ・コーナーへ進入したと同時にいきなりバランスを崩しウォールへ激突。右側面は大破し砕け散った。

僕は、最悪の事態も想定していたが、僅かに動いた頭部によってかすかな希望を抱いていた。
だが、音速の貴公子と言われた貴方は先を急ぐかのように、遥か天空の彼方へ天翔(あまかけ)て行った…

あれから幾年月が経ったが、貴方が奏でるエキゾーストノートも、鬼神のような走りも、今でもちゃんと覚えている。
そして貴方がF1通して教えたくれたことも。

勇気を持つことも、信念を持つことも、最後の一瞬まで諦めないことも、僕は決して忘れない、いつまでも。

ありがとう、アイルトン・セナ。
ありがとう、我が青春期を駆け抜けた英雄(ヒーロー)よ…