千年女優

夏の終わりに願うことの千年女優のレビュー・感想・評価

夏の終わりに願うこと(2023年製作の映画)
4.0
末期癌に侵されて実家で療養中の父と離れて暮らす七歳の少女で、父が誕生日を迎える日に祖父宅へと訪れたソル。久方の再会を心待ちにするも体調優れずなかなか寝室から出てこない父を心配する彼女が、恐らく最後になるであろう誕生日を祝おうとパーティの準備が進む中で家族の各々が抱く複雑な感情に触れる様を描いたドラマ映画です。

監督処女作『La camarista』がオスカー国際長編映画賞メキシコ代表に選出されて以来国際的な注目を集める女性監督のリラ・アヴィレスがヒューバート・バルス基金の支援を受けてデンマークとフランスとの合作で制作した2023年公開作品で、ベルリン国際映画祭で金熊賞を争うなど批評家からの称賛を集め再びオスカーに送り出されました。

死を迎える親とその子の交流という題材だけ見れば類型的ですが、決してウェットにフォーカスすることなく、必ず隣り合わせにある現実や生活と共に描きます。「死」とは一体何か。誰もが子供の内に一度は考える問い。答えるのは神か魔術か、もしくは医学やAIか。父が最後に願うこと。それだけが真理として少女に鮮烈に響く一作です。
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