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宮本武蔵 般若坂の決斗のMASHのレビュー・感想・評価

宮本武蔵 般若坂の決斗(1962年製作の映画)
4.0
『宮本武蔵 五部作』の第二作目。剣に道に目覚めた武蔵の武者修行はここから始まる。とはいうものの、この映画の前半は武者修行というにはあまりにもほのぼのし過ぎている。肝心の道場破りのシーンはほとんどみせず、それ以外の色々な人々との出会いが描かれている。それに対して宮本武蔵は、それまでの獣のような側面が一切ないかのように物腰柔らかく対応する。また、宮本武蔵自体が出ていないシーンも比較的多く、演技が"あれ"なお通や滑舌の悪い少年、そして又八などの様子がほのぼのと描かれている。このようななんとも言えないようなシーンがずっと続くのだ。正直、そこまで面白いとは言えない。

だが、これらのシーンはラスト10分のための"溜め"なのだ。それまでで溜まりに溜まった観客のフラストレーションを、最後の10分で爆発させるのだ。それまで内に秘めたる"般若"を最後の最後でむき出しにして、斬って斬って斬りまくる武蔵。今作では武蔵の持つ優しさを前面に出しているので、観客は彼はもう人として悟っているかのように感じる。しかし、全くもってそんなことはない。強さというものを追い求め、勝つということを誰よりも執着する。決闘のシーンでは優しかった武蔵の姿はどこにもない。"強さ"に飢えた浪人がそこにいるのだ。そして全てが終わった時、武蔵は自分の求めていた"強さ"と現実の"強さ"の矛盾に再びぶつかってしまう。

あんだけ激しい戦いをしたのにも関わらず、ラストは意外とあっけない。だが、あの血まみれ決闘は観る価値はある。今の映画ではこれほどの"溜め"は許されないのだろうなぁ。そういう意味である意味貴重な映画かもしれない。

余談だが、色々と子役が酷すぎる
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