Jun潤

エターナルメモリーのJun潤のレビュー・感想・評価

エターナルメモリー(2023年製作の映画)
3.6
2024.09.04

第96回アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞ノミネート作品。

元ジャーナリストのアウグスト・ゴンドラは、アルツハイマーを患い、日々の出来事だけでなく、過去の経験の記憶も失いつつあった。
そんなアウグストを献身的に支えるのは、彼の妻であり国民的女優のパウリナ・ウルティア。
激動の時代のチリを生き抜いた二人の、純粋な愛情を映し出す。

はぁ〜沁み渡る〜
けどできれば語り部が欲しかった〜
アルツハイマーや認知症ものは個人的にとても心にクるものがあるのでとても期待していました。
しかし特に人物の説明やインタビューが明確にあるわけではなく、それが今作のポイントでもあったのかもしれませんが、序盤から急にアルツハイマーの夫とそれを支える妻の日常の描写から始まり、それらと彼らが若い頃どのように活躍していたのかをおそらく当時の映像を使っていた場面が半々ぐらいだったので、そりゃそうなんだけどドキュメンタリー作品だったなという感じです。

英題にも邦題にもある『メモリー』、記憶については丁寧に丁寧に描写されていました。
時間の経過や病気の進行によって、過去に起きた出来事のことや、現在の日常における些細でも確かに存在する大切な感情たちのことも、いずれ失われてしまう。
けれど、終盤で言及されていたように、記憶があるからこそ未来が切り拓かれる。
それに忘れるばかりではなく、むしろ次々に忘れていくからこそ、その中で忘れられないことの大事さや尊さに気付けるのではと感じました。
加えて、アウグストのジャーナリストという仕事、日々の生活を共有するパウリという存在が描かれていたように、自分の中で忘れられて消え去っていくばかりではなく、誰かと共有することで外の世界に残り続けることもまた、記憶の重要性なんじゃないかと思います。
そういう意味で言うと、忘れ去られてしまう様、寂しい様だけでなく、人から人へ記憶や気持ちが繋がっていく様を描いた人間讃歌のような作品に感じました。
Jun潤

Jun潤