ピートロ

自分革命映画闘争のピートロのレビュー・感想・評価

自分革命映画闘争(2023年製作の映画)
3.5
神戸芸工大映画コース教授・石井岳龍が生徒らとともに作品を作り上げるドキュメンタリータッチなカオス劇。
パッチワークのような自由闊達な構成は面白いが、ひとつひとつのシーンが冗長なのがちょっとつらかった。
ミュージカルシーン、学生さん頑張ってた。
上映後、監督のトークショーあり。筒井康隆の『文学部唯野教授』にインスパイアされたらしい。

他のユーザーの感想・評価

hinano

hinanoの感想・評価

5.0
石井岳龍監督の作品はファンとして好きすぎて冷静に観れないところもあると思うが、コロナ禍の神戸芸術工科大学での自主制作という教育的な集大成とか最終講義みたいなものでもあったのではないかと思った。畳み掛けるように様々なモチーフとイメージが提示される。台風クラブのセリフの引用が、物事、特に作品には始まりと終わりがあるということを暗示しているようで印象に残った。
伊月

伊月の感想・評価

-
馬鹿みたいに面白かった、完全に好みてか、なんだろ、不思議、授業とかでみたら最高
だけど、映画としてと聞かれたらわかりましぇん
Halow

Halowの感想・評価

3.5
なんて自意識過剰なんだろうと思ったが、作品のテーマが見る見られることにあるのであれば、自分自身を物語の中心に置くのは自然なのかもしれない。
ドキュメンタリーパート以降、あまりにも取り止めもないのでどう受け取めていいのか困惑したが、自主制作映画に求めているのはこういうものだった気もする。
教授

教授の感想・評価

-
近年の「映画作家たちの遺言」めいた、あるいは映画という表現の「晩年」を見据えた作家の「集大成」的な一本を、まさか石井岳龍監督も、彼なりのやり方で撮ることになるとは、という驚き。

今後のフィルモグラフィがどう変遷していくかは未来のことなのでわからないが、少なくとも本作は徹頭徹尾、最も好き放題にやり散らかしている映画であることには変わりはない。

石井監督の作品は、作品の出来不出来に関わらず僕自身の血や肉になっているので、あまり言いたくはないのだが、映画自体を「面白く」見せることに対しては「上手」な監督ではないと思う。
これは常々これまでのレビューでも書いてきたことだが、ディテールやテーマはむしろ俗っぽい。

その俗っぽさが俗っぽいまま出てしまうと途端に退屈になる。
約3時間弱の長尺の本作は、特に明解なストーリーもない中で展開される上に、いわゆるプロの俳優は誰一人出ていないので、それは極端に露呈してくる。

これは石井監督が17年間、教授として在籍した「神戸芸工大映画コース」の関係者だけでスタッフもキャストも兼任しての「壮大な」自主映画という性質を持っていて、それもまた「壮大さ」においてデビュー当時の石井監督のルーツ的なものに接続もしている。
ただし、例えば「狂い咲きサンダーロード」の頃とは違い、さまざまな作品を撮り、外部への破壊衝動だけでなく内的なスピリチュアル、オカルト、SF的な要素も全部ごった煮的に投入されている。

正直に言えば…そんな作品がめちゃくちゃになることはあっても、普通に考えて面白くなることはない。
そして例に漏れず、本作は「面白さ」におおいては相変わらず大失敗なのだが、そもそもの部分で「面白さ」の質が違い過ぎる。

本作を観てより感じるのは「映画」が映画のための「目的」ではなく、常に「手段」として個人的な情動を優先し、個人がキャッチできる「世界」や「社会」を映し出そうとすることを優先していること。
そのための「チープさ」に対しては、何の恥じらいも衒いもない、という突き抜け方は相変わらず。

「Like a Rolling Stone」や「Like a Hurricane」というテロップもそうだし、ダメ押しで「Break on the through」と出てきた時には「もうダメだ」という思いと「やり切った」という両方の思いが去来する。
あまりに形骸化した前時代的なロックフレーズを堂々と標榜している「ダサさ」は否めない。しかし一方で今も尚、石井監督の作品の影響が自分の核心から抜けきれないのと同じように石井監督にもこれらのロック的指針というのが生き続けているというどうしようもなさでもある。

何とも手のつけられない映画であるが、何よりも66歳の大ベテラン監督が、当時とまったく同じか、むしろそれ以上の熱量で「自主映画」らしい味わいと攻めっぷりをもって自分語りをやってのけていることは、個人的には賞賛したい。
多くの人が「どうせ面白くないと言うんだろうな」と思うけれど、それ故に僕にとっては大事な作品になったことは事実。

追記:
「爆裂都市」でロックに目覚め「水の中の八月」で映画の凄さを思い知った小僧だった自分が40代も半ばになり、初期衝動も畏れもなくして本作を「偉そうに」評していることの恥ずかしさの方が勝っている感情がある。
ただその「偉そうに」語ることが僕の現在地であり、しかし内実はその「ロック小僧」や「映画少年」を延命させながら生きている点で、石井聰亙、ならびに石井岳龍監督に頭が上がらない。
上映後トーク:石井岳龍監督

本日の上映が初の4K上映
今回のバージョン用に映像をすべて作り替えているとのこと

本作は、筒井康隆氏の「文学部唯野教授」のインスパイア作品だそう

神戸芸工大映画コースの教授として在籍していた時期に、定年をむかえる年齢になり、病気を患ったことなどもあり、自身を内省し、大学を出る前に1本作ろうとこのプロットを思い出して企画した

監督にとって「映画とは何なのか」という集大成的な作品

まさにタイトル通り

完全な自主制作映画のため、ほぼ監督の自費とのこと
野井

野井の感想・評価

2.8

このレビューはネタバレを含みます

大学教師である石井がワークショップシリーズの途中で失踪し、石井が失踪した理由を知るためにワークショップの続きをやる話。映画撮影のドキュメンタリーパートが入り、中身のストーリーとメタのストーリーを行ったり来たりする。ちょっと長くて退屈。
すごいなぁー〜
自分が変われば世界が変わる 
僕もそんな気がする
映画内の学生たちが教授の残したワークショップを続けているうちに次第に教授の思想や感覚が伝染していく……人の意志や感覚が世代を超えて伝わる様子が劇内でもメタ的な視点からも克明に記録されている。

自主製作ということもあり商業映画としては全然厳しい点もあるとは思うのだけど、自らの映画製作を通して実践的に教えようとする試みはきちんと評価されて然るべきだと思う。

あとやはり映像に対しての無垢さというかプリミティブさを忘れない監督の姿勢が好きだ。「映写機の光源と太陽をカメラで映したらほとんど同じ画になった」(上映後トークショーでの発言)。爆裂都市→今作と続けてみるとその部分はずっと持ち続けてるんだなとまた監督のことを一層好きになってしまった。

石井監督なりの『君たちはどう生きるか』…?
邹启文

邹启文の感想・評価

3.4
最高に意味不明すぎた、多分学生の親見たら泡吹いてぶっ倒れるで

とはいえ、岳龍もここまで恥を忍んで映画作ってんだから、これから映画界に入る人たちも無駄なプライド全部捨ててぶつかっていける自信が出てきそうで希望が持てた。
岳龍映画史のニューホープ枠やね
ひー

ひーの感想・評価

5.0
ユーロで石井岳龍監督『自分革命映画闘争』3回観た
人間が自己表現の一つとして武器にしている映画は、太古の洞窟壁画から始まっていた
テクノロジーの発展により様々な姿を見せるようになった表現、未来の表現はこれから人類と共にどのように進化して行くのだろう
表現の果てしない可能性に挑む一作

ユーロスペースにて石井岳龍監督の新作『自分革命映画闘争』(2023)3回観た
映画館の四角いスクリーンから飛び出した映画は、空を突き抜け観客一人一人の心という自由な宇宙へと広がって行く
観客それぞれの宇宙の中で真に完成された本作は、私達の心に衝撃的で壮大なビッグバンを起こすのだった
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