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虎の尾を踏む男達のTSのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
3.4
【勧進帳を読む弁慶】74点
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監督:黒澤明
製作国:日本
ジャンル:時代劇
収録時間:59分
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レンタル落ちで何と黒澤明の初期作品が200円で販売していたので数作購入。その内の一つ、『虎の尾を踏む男達』は小一時間しかなくとも中々味わい深い作品でした。ただし、物語の展開はシンプルといえど随所に出てくる言葉が非常に難解。字幕を強く推奨します。と言っても字幕で見ても半分くらいの単語はよく分からないのですが(笑)

今作は、1185年以降における、義経一行が兄の頼朝から逃げる話であり、その道中の安宅の関において偽の勧進帳を弁慶が読み上げ難を逃れるというものです。黒澤明初の時代劇であり、能の『安宅』を基盤とし、歌舞伎の『勧進帳』を題材としているようです。能や歌舞伎に関しては残念ながらほぼ無知であるため、そのあたりは悔やまれます。このあたりの知識を豊富に有する方が見ると、劇中の言葉、特に勧進帳を弁慶が読み終えてから冨樫が弁慶に幾つもの問答をする箇所をサラッと理解できるのでしょう。
しかしながら、要するに彼らがバレずにこの関所を乗り越えるということを頭に入れておけば全体像の把握は難しくありません(実際は冨樫は義経に気づいていたようですが、同情で逃した模様)。そもそも義経は平泉で死亡したとされているのでこんなことで殺られるはずがありません。どこまで史実かはわかりませんが、一定の緊迫感があり良かったと思います。

強力役のエノケンこと榎本健一もコメディ風の役作りをしていましたし、何より終盤に顔を明かす十代目岩井半四郎演じる義経の存在感は半端ないものでした。この演者の方は歌舞伎役者のようですね。なんというか、もう声質が他の人と異なっていました。また、今作の主人公とも言える大河内傳次郎演じる弁慶も素晴らしく、勧進帳を読み上げるところは今作最大の見所と言えるでしょう。

能や歌舞伎の知識が乏しいため、今作の良さを最大限に理解出来ていませんが、何やら味わい深い作品と感じました。くれぐれも見られるならば字幕をつけるのを忘れないように。恐らく返り討ちにあいます。
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