ひろ

虎の尾を踏む男達のひろのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
4.0
黒澤明監督・脚本によって製作された1945年の日本映画

能「安宅」と歌舞伎「勧進帳」を題材にした、黒澤明初の時代劇。長尺で知られる黒澤映画では珍しい59分という最短の作品でもある。それも、終戦間近で金をかけた撮影ができなかったからだ。さらには、GHQの不当な処分により、上映されたのは1952年になってからだったというんだから時代を感じる。

短い作品だけれど、ミュージカル風の時代劇として秀逸な作品だ。義経の悲壮な旅物語をより際立たせているのは、原作にはないひょうきんな強力の存在だろう。その強力を演じたのは、人気の絶頂期であった「昭和の喜劇王」、エノケンこと榎本健一だ。数分もしないうちにエノケンの凄さが解るだろう。この人の表情や動きは人を惹き付ける。暗い時代にも人々を笑わせ続けたのは伊達じゃない。

弁慶を演じた大河内傳次郎と、富樫を演じた藤田進の大スターが対峙するシーンも見ごたえがある。脇を森雅之や志村喬が固めてるんだから、贅沢にもほどがある。短い作品なのに、ラストもしっかりしている。あなた達の境遇をお察ししますといった、言葉にしない男のやり取りがかっこよすぎる。短い映画だし、気軽に観れるから観るといいよ。
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