大河内の眼光と台詞回しは、この時が最上のものだと確信する。豪放にして妖艶、剽軽にして悲劇であるその相貌の、ダイヤのごとき、ドラマティックな凝縮たるや。傍に控える森雅之の、剃刀のごとき横顔の、ソリッドな頬の痩け方も見逃せぬ。
山伏か偽山伏かと、安宅の関にてすさまじき問答の応酬が展開されるハイライト。大河内の切り返しも見事ながら、鷹揚な藤田と、彼の背で目を光らせる久松保夫とのあざやかな対比。
その立ち位置による演技の肉付けの濃淡といい、緊迫と滑稽とが絶妙なバランスで収められていることといい、画面造形の見事さが、この忠信の物語に現代的な相貌を与えている。