けんたろう

虎の尾を踏む男達のけんたろうのレビュー・感想・評価

虎の尾を踏む男達(1945年製作の映画)
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そうしたら、やっぱり虎に噛みつかれるおはなし。


今作の原作は、歌舞伎の演目『勧進帳』
たしか僕は中学校だったか高校だったかの、国語の授業だったか課外授業だったかで、観ただったか聴いただったか…ああああもういい!忘れた!

とにかく僕は何かかんかで『勧進帳』にまつわる何かしらの何かを何かしたことがある。
そしてその作品には義経への弁慶の忠義の物語や、弁慶と関司の勝負の物語というイメージがあった。


随分ヘンテコな事を書いたが、まぁつまり今作の強力(ごうりき)(榎本健一)という存在は、話を語る上で不要な存在と言いたかったのだ。
主人公を大物・弁慶とし、敵を大物・関所の関司とした、緊張が充満する勝負にも、
立派な主君・義経への立派な臣下・弁慶の忠義立てにも、
絶対にその強力は要らない。確信している。

しかしなぜだろう。
強力の存在はあらゆる所で活きている。必要のない者が必要になっている。
既に完成された物語に新たな存在を加えた形だが、これは"加えた"というより"編み込んだ"と言った方がいいのかもしれない。

それも巧みに編まれていて、その一本を抜けば全てが瓦解しそうなほどだ。入っていない時には成立っていたはずなのに。

僕はこの黒澤明の編み物技術に驚くと共に、強力を演じたエノケンという人物に興味が湧いた。
黒澤映画から、往年の日本喜劇へ。
今作のせいで、観たいジャンルがまた広がってしまった。