えそじま

幻影は市電に乗って旅をするのえそじまのレビュー・感想・評価

3.8
冒頭の愛嬌あるキリスト降誕劇ではブニュエルのお決まりというか、他作品でも度々登場する欲望の林檎がしっかりと描かれていた。というかむしろリリア・プラドのイヴを林檎と絡めたかったが為にこの演劇を取り入れたようにさえ思える。パーティ帰りの客や楽隊、屠殺場の従業員、肉、キリスト像を抱え教会に向かう女性、施設の子ども達、共産主義を嫌うアメリカ人、ピニリョス爺などなど、愉快な庶民達を入れ替わりに運ぶ盗まれた市電の旅もやがて人知れず終わり、いつか記憶からも消え去る。主なる神がアダムに与えた労働の罰に従っているかのように、劣悪な労働環境に勤しむ庶民達が束の間に見た幻影となる。
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