この世界は男性が支配していて、男性が無自覚に平然と女性を常に虐待している。それはよく分かるし、おそらく正しくて、そのあたりを視覚的(映像的)に娼婦を「痛み」の身代わり(もしくは代表)として中心に置き、90分の悲痛な主人公として彷徨わせている。
動きなく、情報を制限した画面に寓話的でもあり詩的(私的)なセリフが乗っかる、ニナ・メンケスの写真集としてならギリあり。実験映像としてなら40分で十分。まあ美術館の展示なら、それでも長いが。
題材は生々しいのに抽象的な構成。作家の確固たる思想が表現の肝ではあるが、事あるごとにチラつく見せかけの映像美は表現者の安い欲望でしかない。どちらも求めて何が悪いのかと言われるなら、その散漫で傲慢な姿勢が「映画」を弱くしているし、退屈な勉強会の「見世物」に成り下がっているのだとクソリプするしかない。