3.11の5日後。
銀行員のコムラの妻、キョウコが置き手紙を残し失踪。
失意のコムラは友人に頼まれ、小箱を北海道へ運ぶことに。
一方、コムラの同僚のカタギリの家には、人間大のカエルくんが現れ、「東京に大地震を起こすミミズくんと、共に戦ってくれ」と言われる。
村上春樹の短編小説6作を組み合わせて脚色し、フランスで長編アニメーション化した作品。
登場人物たちは、自分の目に見えないものによって、人生を動かされている。
キョウコは震災の後、5日間もテレビに釘付けになった後で失踪。
コムラは、中身の分からない箱を運び、体調の悪いいとこの通院に付き合うが、いくら調べても原因が分からないと言う。
またカタギリの前に現れたカエルくんは、彼以外には見えず、戦いは想像力の領域で行われると言う。
脚色で秀逸なのが、3.11の5日後という時代設定で、あの頃の日本人は誰もがテレビの映し出す想像もできない惨禍を見つめ、放射線という見えない敵を意識していた。
ピンポイントでこの日を起点とし、複数の物語をパズルの様に組み合わせることによって、より寓話性が高まった。
モブのキャラクターや、そこにあるはずだが邪魔なオブジェクトが半透明で描かれるのも物語のテーマと繋がり、キーカラーの使い方も面白い。
ピエール・フォルデスは、曖昧な世界に揺れる人間たちを象徴的に描き出した。