2024.07.26
村上春樹原作。
今回は日本語版にて鑑賞です。
東日本大震災から数日が経った日本。
銀行員の小村の元から、地震以降眠らずにニュースを見ていた妻の京子が突然姿を消した。
一方、小村の同僚である片桐が家に帰ると、そこには巨大なかえるくんがおり、近いうちに起こる大地震から東京を守ることを提案される。
彼らが見失った現実と自分、その在処とはー。
村上春樹節が最ッ高に効いていましたね。
6つの短編小説を一つの作品に再構成したとのことですが、作中の世界観は近付き過ぎず離れ過ぎずな感じで、要所要所に特徴的なキャラクターが登場しつつ、それぞれに構築される不思議な空間と、それぞれに繰り広げられる不思議な会話劇。
何を言っているのか、何について話しているのか、分からないようでなんとなく分かるような気もする、もしくは分かった気にさせられる、そんな村上春樹節全開の作品でした。
にわか知識ではありますが、村上春樹といえば、会話劇と登場人物たちの心情描写、なイメージ。
今作でもそれは相変わらずで、登場人物たちに降りかかる出来事や、彼らが出会う人々との会話、追想する過去、それらがあっても必ずしも状況が好転したり、新たな人生へと向かっていったり、観ている側に突き刺さってくるメッセージがあったりするわけでもなく、登場人物たちの心情に何かしらの区切りがついて、ここで終わりではなく、これからも続いていくであろう彼らの人生にまで想いを馳せられるような奥行きや広がりが、今作が放つ魅力の一つだったんだと思いました。
そして今作を語る上で外せないのは、村上春樹原作のメディアミックスとしては初のアニメーション作品であるということ、そしてそれが日本産ではなく、ヨーロッパ諸国をはじめとした世界各国の技術と才能が結集した作品であるということ。
アニメだからこそ出せる村上春樹作品が持つ独特の魅力だけでなく、日本産アニメでは到底できないような演出、作画、表現に仕上がっていました。
そんな世界各国の技術と才能が日本の作家の元に集まったというのはとても誇らしいことですし、それでいて物語が日本を舞台にして描かれているのだから、親近感も湧くのに、それでいて現実感は薄いという、なかなか観られないような世界観に仕上がっていたように思います。
今回は日本語版にて鑑賞しましたが、字幕版も観てオリジナルの雰囲気も味わってみたくなりました。