うめ

弾痕のうめのレビュー・感想・評価

弾痕(1969年製作の映画)
3.8
裏の組織に属しながらも、誰にも心を許さない加山雄三。
演技を見るのは2回目ですが…
前に見た時は、取ってつけたような喜怒哀楽の嘘臭さがなんか鼻についてしまった。
ところが、こういった感情の抑揚を見せない役が向いているのか?
クールで投げやりな雰囲気が意外と似合っていた。

しかし、この作品の空気を作っているのは
ズバリ!
太一喜和子です。
女性芸術家なのですが
何にも頓着しない
退廃的な表情
まるで熱を感じない乾いた色気
なのに
作品に没頭する瞬間、そこに含まれる少しの狂気。
思い出を語る時のあどけなさ。
感情の振り幅が芸術家らしい。

そして、佐藤慶の存在も忘れてはいけない。
いくらでも喰ってしまえるのに、あえて抑えた感じ。
まさしく大人の渋み。
やはり素晴らしい役者さんです。

ハードボイルドなんだけど
それはアメリカのような引き締まったものではなくて
むしろ、どこかフェリーニのような退廃さをまとっている。
こんな日本映画もあったんだ。
ちょっとした驚きでした。
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