CHEBUNBUN

オステンデのCHEBUNBUNのレビュー・感想・評価

オステンデ(2011年製作の映画)
4.0
【匿名的他者は霞んだ世界には入れない】
ユーロスペースにて開催中のラウラ・シタレラ特集で『オステンデ』を観た。ヒッチコック『裏窓』みたいな話だと聞いていたが、露骨過ぎて笑うも観点はめちゃくちゃ面白かった。

相方より先にバカンス地へ着いた女。アンニュイな面持ちの彼女は何気なく外を覗き、プールにいる怪しげなおじが気になり、観察を始める。一方で、食堂のにいちゃんが彼女にダル絡みを始める。

旅行とは自分の生活がある場所のしがらみから解放され匿名的他者となる。観察の眼差しは我々が映画を観るのと同様に覗き見的役割を果たす。しかし、社会は完全に旅行者を匿名的他者にしようとはせずに対話を求めて来る。そこで生じる見る/見られるの関係を軸にしつつ、結局匿名的他者の眼差しは対象の領域へアクセスすることはできないと語る。

この表象が面白い。ボヤけた空間にくっきり主人公を捉え、ボヤけた世界へ入門させる。しかし、その空間を彷徨う中でおじはくっきりした世界へするりと抜けてしまう。さらに追うも、相方から電話がかかり、その対応をする中で消えてしまうのだ。

それにしても、旅行あるあると言える話したがる人ほど話がつまらない問題の解像度がやたらと高く、主人公のペットボトルの水の減り方が早くて笑った。
CHEBUNBUN

CHEBUNBUN