きょんちゃみ

ビデオドローム 4K ディレクターズカット版のきょんちゃみのレビュー・感想・評価

-
デヴィッド・クローネンバーグ監督は私が本当に憧れている人である。この人は、親を早くに亡くした。そのとき、デヴィッド・クローネンバーグ監督は、自分が昔からもっていた「世界では、ちっとも納得できる理屈も理由なしに、おかしなことが突如として、起きる。突発的に、もう取り返しのつかないことが起きてしまう。世界は人間がこしらえた論理とは別の仕組みで動いていて、人間はそのうちのほんの一部しか分からない。」という不条理についての直感を肯定されたような気がしたと話していた。デヴィッド・クローネンバーグ監督は、親が死んだことからさえ、自分の思考の材料を得て、確信を得て、しかも自分が肯定されたと感じるような頭のいい人である。とんでもなく頭がいい人である。次に何が起こるか分かっているのは人間が安定した生活をつくりあげて、そのネットワークの中でぬくぬくと暮らしているからで、そのネットワークがひとたび綻びたり、割けてしまえば、その裂け目から、人間にとって都合のいい理論化を拒絶するようなとんでもない「ブルータルでスタバーンなファクト」が飛び出してくる。この感覚を僕は未だにデヴィッド・クローネンバーグ監督から学び続けている。私がどれだけ尊敬してもしきれない監督、それがデヴィッド・クローネンバーグ監督である。人の理性を盲信してはならないということを僕が学んだのは、デヴィッド・クローネンバーグ監督からである。本当にいくら感謝してもしきれない。
きょんちゃみ

きょんちゃみ