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ブラック・デーモン 絶体絶命のnetfilmsのレビュー・感想・評価

3.4
 立木文彦氏がナレーションを務めた日本版予告編の「崩壊寸前の油田」「通信手段なし」「何者かが仕掛けた爆弾」「超巨大ザメ降臨」の4点セットが今回は言い得て妙な映画で、確かにその4点セットはしっかり入っているんだけど、エイドリアン・グランバーグ監督の意図とは微妙にずれているというか何というか。配給の松竹の裏方さんは今回はしてやったりじゃないか。アメリカ人のポール(ジョシュ・ルーカス)は、海底油田の視察とバカンスを兼ねて家族と共に風光明媚なメキシコの避暑地を訪れる。典型的な一姫二太郎と自慢の妻を引き連れてこの地にやって来るのだが、街の雰囲気は暗い。かつては活気があった街は廃れ、悪魔から身を守るといわれるアステカの彫刻だけが光っている。街全体が何かしら嘘を付いている雰囲気ありありで、この街の隠蔽体質を前半部分では随分丁寧に描写し、父親と他の3人とを引き離すまでが1セットなのだけど、それなら最初から4人で油田を見に行くにすればこんなに時間はかからなかったと思う。最近のアメリカ映画は省略が下手で、90分で行ける物語を丁寧に説明しようとするからあっちにもこっちにも話が飛び、どんどん長くなる。つまり最初から先の4点セットの只中に4人を置いてしまえば一番手っ取り早いのだ。

 然しながら今作が重きを置くのは先ほどの4点セットによるシチュエーション(状況)ではなく、アメリカ資本に翻弄されるメキシコとのアメリカの分断と、古からの伝承が暗に伝える環境問題への強い警鐘に他ならない。まぁ途中まで観ればジョシュ・ルーカス扮する父親は何もこんな町に大事な家族を連れてヴァカンスでわざわざ来る必要はなかったと思うし、彼の思想との整合性も取れないわけだが、太古から伝わる磁場の呪いが彼を誘い出したとすれば一応は合点が行く。然しながら油田の下に人の死体がぷかぷか浮いていたり、エイドリアン・グランバーグという人は根本的にサメ映画に出て来るサメの習性をわかっていない場面が多い。この場合は当然、全てペロリと平らげるのがサメであってあんなに大量の死体がぷかぷか浮いているなんてことは現実問題として有り得ない。しかも時限爆弾というのはあらかじめ時間の期限を決めるから時限爆弾なのであって、たぶんタイマーの数字は4桁ではなく、5桁しかなかったから最大でも9日99時間99分にしか設定出来ないわけで、犯人がブラック・デーモンakaメガロドンがいる地でどうやって海底にこの爆弾を設置できたのかそちらの方が気になる有り様で、しかも配管を切り溶接しても電気は復旧しません。配管は配管だし、電気は電気。エイドリアン・グランバーグは単なるおバカB級映画にそれ相応に高尚なものを付け足したかったのだろうが、おバカはおバカ。徹底して馬鹿に徹すれば良かったのだ。
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