このレビューはネタバレを含みます
「やりやがった、アメリカのキザ野郎」
じゃないんだよ、本当に。
アメリカのサバイバルドラマ&映画でやりがちなこと。嫌な奴をカッコ良く死なせること。様々なサバイバル作品でよく見られる光景だが、私は好きではない。
散々ヘイトを重ねたクソ野郎が後々反省やら後悔やらを経て身を投げ打って人を救ったとして、マイナスがゼロにはなってもプラスにはならないのだ。今作もそれである。
序盤から性根の悪さが滲み出る、今作の主役である父親ポール。家族を連れて妻との思い出の町を訪れたところ、以前とは打って変わった寂れた風景。
町民への態度は上から目線で、油田施設で働く作業員の話も半笑いで聞く。最初からやたらヘイトを稼ぎまくる態度にもはや「ああ、コイツ最後は自分が犠牲になって死ぬんだな」という結論に至ってしまう。
完全に萎えた。
設定自体はサメ映画でも斬新で、舞台はメキシコの漁業が主流の町、石油会社で働くポールが初めて油田開発に携わった施設でもある。しかし原油流出により漁業が出来なくなった町は生活ができない程に廃れていき、修理を手配するべきはずのポールは上役に脅され事態を隠蔽することに。
ここら辺の事情を苦悩してる体で告白するのも、マジで寒い。その前に気のいい作業員や妻と口論してブチ切れやらかしをした後だから余計に「は?」って感じ。
最後のお涙頂戴シーンまで着いてきた人も、あからさまな家族愛だね感動するね、のシーンで萎えたと思う。ヘイトを稼ぎすぎて何にも心に響かなかった。
メガロドン自体の登場シーンがあまりなく、町民が救いを求めるアステカ神の神トラロックやまじない等の演出が上手く活かされていない。設定は本当にサメ映画の中でも目新しいものなのに、人間ドラマに重きを置くせいで雑音でしかなかった。
ポールの懺悔シーンで流れる環境問題への配慮のような映像も余計。いらない。全部が中途半端。サメ映画の自覚を持て。
メガロドンはサメではなくアステカ神話の悪魔として神が放たれたものであり海を汚染したことへの天罰だ、という話が出たり、何故か幻覚を見せたりしてくるのだが、そこら辺の伏線回収も何もない。幻覚は原油流出による症状なのかと思ったが、そういう説明も全くない。
とにかくサメの出番が少ない!!!!!
サメが主役のサメ映画を期待する私には絶望的に合わなかっただけで、もしかしたらがっつりハマる人もいるのかも…
父親以外のキャスト陣の演技が良くて、奥さんも娘もかわいいし、息子もちょっと変な子だけど好奇心旺盛な可愛らしい子だったし、油田に残っていた作業員二人もいい人達で、あまりに一人でヘイトを溜めすぎた父親も可哀想ではある…が、サメ映画としては面白くない。
油田に来た直後、ブラック・デーモンがボートを襲うシーンがクライマックスだったな。
ごめんね、絶望的に合わなかった。