KANA

恋人のいる時間のKANAのレビュー・感想・評価

恋人のいる時間(1964年製作の映画)
3.8

ゴダールにしては珍しい風俗メロドラマのテイ。
でも実際はポスターやフォトアルバムのカットをそのまま散りばめたような、アートギャラリー感覚の作品。

うまくはぐらかしながら夫と愛人の間を行き来するシャルロット(マーシャ・メリル)はまるで子猫のよう。

フレッシュなショートボブまでも艶かしく映える首筋、完璧なEラインの横顔、スムーズな肌、美しいカーヴィーライン、スラリと伸びた手足
…対象であるマーシャはもちろん、ラウル・クタールのカメラワークがフェチ過ぎて魅入ってしまう。

男女の手脚の交差や愛撫に粘性が全く感じられない。
だけどそこが小粋だ。

詩的なフレーズのやりとりがあったかと思えば、どこかから引用したようなインテリ且つ難解なセリフで戸惑わせたり、とにかく捉えどころのないダイアローグ。いじわる…
でもって随所に挟まれるマーシャの少女のようなウィスパーボイスが魅了する。

ネガとポジを反転させたり、90度回転させた画面を映したりといった映像の遊びもにも「普通はイヤだ」のエスプリが感じられる。

ちなみにこの頃ゴダールはアンナ・カリーナの浮気に悩んでいたらしい。
本作ではそんなオンナの本能をマーシャの肉体で象徴したとか。

……

さて、周知の通りそのゴダールも先日ついに天に召された。
『世界一キライなあなたに』のレビューで"DIGNITAS"に触れた際にはまさかこんな形でゴダール爺が逝くとは思ってもみなかった。
きっと、自分のセンスはもう出し切り、あとに残るものは疲労だけの余生だったのかもしれないなぁ。
もう、死ぬまでアヴァンギャルドなんだから!

ありがとうJLG。 安らかに ❤︎
KANA

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