このレビューはネタバレを含みます
昭和のノスタルジーを彷彿とさせる台湾映画🇹🇼を、開館から40年経つ老舗ミニシアターで鑑賞したら、まるでタイムトラベルしたような錯覚で癒されました💕
台湾の俊英フー•ティエンユー監督が、理髪師をしている自身の母親をモデルにシナリオを書き上げ、台中の実家で営んでいる理髪店💈で撮影を敢行したオリジナリティ溢れるヒューマンドラマ。
アットホームな雰囲気を感じさせながらも、家族間で波立つ感情や、老いを受け入れていく主人公の繊細な心情を丁寧に描いている良作でした✨
アールイは3人の子供を育て上げ、一人で理髪店を切り盛りしている。常連が離れないのは、その確実な腕前と肝っ玉母ちゃんのような人情味で居心地の良さがあるからだろう。
ある日、長年通い続けてくれていた"先生"が病に伏したことを知り、出張散髪をするため"本日公休"(本日定休日)の札を下げ、車で出掛けたのだが、携帯を自宅に置いたままだった。
スタイリストをしている訳あり長女、ヘアサロンで美容師をしている離婚した次女、定職に就かない長男は連絡をし合い店に集まるが、居場所が分からず心配する。
アールイは向かう途中である若者からお茶をご馳走してもらい心が落ち着き、お礼にあまりに伸びた長髪を散髪する。
そして向かった先の歯科医の"先生"の家族と対面し、意識も薄れ目を開けない"先生"の散髪をまるで儀式のように滞りなく済ませる。家族が知らなかった"先生"の常の姿をアールイから聞かされて涙する様子に、こちらも思わずもらい泣き😢
個人的に一番良かったのは、次女の離婚した元夫がアールイの近くに住んでいて常に気に掛けてくれていた。散髪をしながら「近々、再婚しようと思う」と伝えられた時のアールイの表情が本当に優しくて最高の笑顔をしていたこと☺️
アールイは頑固でお節介で若干、図々しいところもあって、普段ニコニコしているタイプでもない。だからこそ、娘を思えば普通ならショックな表情になりがちだけど、元義理の息子を心から祝福できる厚い人柄に打たれました💗
夫に先立たれ、子供たちは自立したものの、真面目に仕事を続け、お客様との信頼関係を大切にし心を律していられたからだろう。
家族だからって、知っているようで実のところ何も知らない。
何を思っているのか?それぞれ心配しながらも本心は知らないまま時が流れてしまう。これを観たらちゃんと気持ちを素直に伝え合うことの大切さを痛感するでしょう。
ハサミ✂️を扱う軽快な音、後頭部で決まるスタイルだが、指先は職人芸のように見えたが、主役ルー•シャオフェンが4ヶ月の猛特訓で技術を磨いた成果とのこと。役者魂は素晴らしい👏