女性理髪師アールイは常連客との繋がりをとても大切にする仕事ぶり。彼女のその信条を窺わす生き様が独立した3人の子供たちの考え方との対比で、より奇特に見えた。来店を促す電話での営業活動など、お節介をする者とお節介を受け入れる者たちの交流は自然と現代における日本の作法や文化との違いに思いを巡らされる。
自分の経験からいうと行きつけの床屋を決めるのは結構難しい。腕が良くて、その上で程よく自分のこと相手のことを雑談し合える理容師が良いのだが、この理容師との距離感がなかなかに難しい。ずっと黙って散髪されるのも寂しいし、かと言って余りにもこちらのことを根掘り葉掘り聞きたがる理容師も困りものだ。いい床屋が見つかったと思っていたら、いつの間にか理容師の高齢化のため顔剃りがおぼつかなくなって行かなくなってしまった店もあった。あのご主人、今もお元気かな?ふと彼のことを思い出した。
映画は柔らかくて温もりのある物語なのだが、自分には場面と場面の繋ぎ方が唐突に感じられたり、字幕で追った台詞回しが自分の感覚に合わなかったり…と正直あまり入り込めなかったのが悔しい。
実は主演ルー・シャオフェンは初見。理容師なら思わず散髪してあげたくなる(笑)農家の青年をチェン・ボーリンが演じていた。
字幕翻訳は井村千瑞氏。