ワンコ

未来は裏切りの彼方にのワンコのレビュー・感想・評価

未来は裏切りの彼方に(2019年製作の映画)
3.8
【翻弄される人々】

東欧出身の僕の友人は、母国語の他に、英語、フランス語、ドイツ語と日本語が出来る。出来るとは読み書きと会話が出来るということだ。聞いて理解するだけだったらイタリア語とスペイン語も範疇に入るらしい。日本に遊びに来たことがある彼のお母さんは、フランス語とドイツ語が出来た。彼の両親は、ソ連の衰退を感覚的に認識していたらしく、彼にロシア語を学ぶことは薦めなかったらしい。だから、ロシア語を学ぶ友人が多いなか、彼はロシア語が出来ない。

彼によると、東欧は1,000年以上にわたって政治的にも文化的にも他国に翻弄されてきた歴史があるから、語学は重要な生きる術だったと言っていた。そうした苦難の歴史があるからこそ、その不条理な状況から脱却すべく、多くの東欧諸国がロシアによる侵攻を受けるウクライナを支援しているのだ。

ただ、すべての人が語学に堪能なわけではなく、貧しい人々は就学の機会も少なく、戦時中などは、この映画に描かれたような状況になるのは当たり前だったのではないかと思う。

この映画は、Netflix映画のナルヴィクとどこか通じるものがある。

戦争映画なんていうと、過剰にスペクタクル感やスパイ活動や裏切りの緊迫感を求める人がいると思うが、実は、ここに描かれたような状況こそが、東欧や北欧など、いわゆる列強など強国に翻弄された国々の人々の共感するところなのではないのかなんて考えてしまう。

そんなことを考えると切ない映画だった。
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