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異端の純愛のpunyapuのレビュー・感想・評価

異端の純愛(2023年製作の映画)
4.7
全3話からなるオムニバス作品。第1話「うずく影」は、横溢する静謐さ、山本愛莉と大野大輔の演技(特に目の演技!)が素晴らしく、沈黙の中の鮮やかな逆転劇が見事。監督談話に寄れば数時間で撮られた作品だそうだが、その短時間にこれだけ的確なショットを撮影出来た事は驚異的。編集も素晴らしく、ちょっと口幅ったい言い方だが、井口監督の「ベテラン」っぷりが良く分かる。これはなかなか出来ないだろう。
第2話「片腕の花」は、監督の代表作『片腕マシンガール』へのセルフオマージュのようでもあり実はそのまま「続編」でもある、と言えるシナリオのテイストが絶妙。八代みなせ演じる美しい片腕のヒロインに翻弄されていく「いじめられっ子」高校生役の岡田佳大も素晴らしい。サディズムに目覚めていく目の演技は特に秀逸。個人的には少し音楽の使用頻度が高すぎるか、とも感じたが、そのへんは好みか。
第3話「バタイユの食卓」はまさに井口映画の真骨頂で、ただ「生きる事」に過剰な苦しみを背負った男女の運命的邂逅とその恋の成就を描く。監督のフェチズムが遺憾なく発揮され、かなりエロチックなシーンもあるのだが、中村有沙のストレートな「恥辱演技」が清々しく、イヤな印象が全く残らない。クライマックスの展開についてはここでは伏せておくが、満たされる者は代償として何かを失い、それでも一つとなって生きる(もしくは死ぬ)という井口映画の世界観が巨大なハンマーのように振り下ろされる。理解出来ない、という観客も多いかもしれないが、逆に、圧倒的に「捕まる」観客も生まれるだろう。文字通り、渾身の、かつ珠玉の映画である。
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