茶一郎

マン・オン・ワイヤーの茶一郎のレビュー・感想・評価

マン・オン・ワイヤー(2008年製作の映画)
4.6
『 There is no Why 』

 1974年、ワールドトレードセンターのツインタワー間にロープを張り45分もの間、綱渡りをした男がいた。大道芸人フィリップ・プティはまだ綱渡りを始める前、そしてビルの建設前、このビルで綱渡りをしようと心に決める。20世紀最大の犯罪芸術と呼ばれた綱渡り、その芸術:犯行の様子がドキュメンタリーで描かれる。
アカデミー長編ドキュメンタリー映画賞含め、多くのドキュメンタリーの賞を受賞、その内容はロバート・ゼメキス監督「ザ・ウォーク」により映画化された。

 実際の記録映像、写真の豊富さに純粋に驚く。

『不可能だ。よし、やろう』
絶対に不可能なミッションをチームで遂行する緊迫感と爽快感は「ミッションインポッシブル」さながら。
ドキュメンタリーだが、何かに取り憑かれた男の偉業と切ない着地は「風立ちぬ」まるで劇映画を見ているよう。

『僕の中の何かに背中を押された。触れろと』
 他人には決して理解されることがないが、本能的に自分だけの夢を追い続け、取り憑かれた男の生き方。
安易に『勇気をもらえる』などども思わせない作り。正しくなさ、その正しくなさを綱渡りにより肯定しようとする男の生き方。

 なんか変わった人が危ない所で綱渡りをしたってよ。という話に終らず、夢と正しくなさと生き方のお話。その行為に理由がなんてなくて当たり前。

 『人生は、エッジを歩いてこそ生きる価値がある。反骨精神を持たねばならない。社会の規則に慣らされることを拒み、出世を拒み、繰り返しを拒む。日々、すべての発想を真の挑戦と受け止める。そうすれば人生は綱渡りになる』