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あぁベリンダのくりふのレビュー・感想・評価

あぁベリンダ(2023年製作の映画)
3.0
【マルチバーストルコ嬢】

Netflixの新作。私はトルコ映画ほとんど見ておらず、ましてやコメディって多分、初めて。

悉く、かゆいところに手が届かない展開で、消化不良な出来事も残してしまうが、それでも、リメイクというコトを含め、興味深い体験となりました。

ベリンダとはヒロインや登場する女性の名前ではなく、トルコ風呂で使うあるモノの名。

あらすじ紹介にも出ているから少々書くと、野心満々の若き舞台女優が、嫌々受けた“良妻賢母”を演じるCMの撮影をしていると、その描かれる世界に飛ばされてしまう…て、お話。

ネタはあるあるだけど、現代トルコ女性の生き様を問える、とても面白い装置だと思った。

1986年版は未見だが、今リメイクされる程の面白さは当時、詰まっていた筈。が、どうも本作の展開・オチだと、トルコ女性の立場はオリジナル当時と大して変わっていない…と結論づける、ディストピア・コメディに仕立てたかったように思える。それでいいのかな?

好きに生きられる女性がいる一方、保守の束縛から出られぬ女性も居る。前者を主人公に、後者の生きづらさを叩く構造だが、その生き方に双方とも、魅力を感じられないんだよね。

ヒロインはずっとピリピリして、舞台女優としての成功しか頭になく、“良妻賢母”の異世界生活は嫌悪するのみ。で実際、描かれる主婦暮らしは苦労ばかりで、喜びが想像できない。

これじゃそもそも、物語として魅力あるものにはならないと思うんだけど。

イントロからして違和感。ヒロインは舞台女優というより、性的魅力を振りまく、あまり巧くないミュージカル女優に見える。演出がなんちゃってインド映画みたいだし。

現代トルコ美人ってこんなかーと見惚れるヒロインの美貌。トルコ映画ってこんなセックス描写OKなんだ!という驚き、等、ムスリム男性優位社会だろうに自由度高いねー、と感心するポイントは多々ありました。Netflix映画だから実現できた気もするけれど。

でもやっぱり、設定の面白さを活かしきれぬもどかしさは、解消されない。それとも、こうやって女性が損するような纏めにしておかないと、映画化が実現できなかったのだろうか?

“演じる”ことの魔力や矛盾などにも、もっと彫り込める素材だったと思いますが。…残念。

ヒロインのネスリハン・アタグルさんて、トルコ版ミーガン・フォックス、という趣があって、私は好きです。

<2023.4.18記>
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