スギノイチ

野獣を消せのスギノイチのレビュー・感想・評価

野獣を消せ(1969年製作の映画)
4.5
愚連隊のリーダー・矢田を演じる藤竜也にとって、この役は初めて俳優としての手応えを感じた転換地点らしい。
長谷部安春の演出は明らかに藤竜也率いる愚連隊チームの描写に注力している。
渡哲也もいつも通り格好良いのだが、愚連隊の狂騒アクションに外からお邪魔してきたかのような立ち位置だ。
本来、この映画は妹が輪姦された事の復讐劇なのに、その因縁が判明するのはようやく後半になってから、というシナリオ的な弱さもあり、渡哲也のヒーロー性は幾分犠牲になっている。

いいトコなしかと思われた渡哲也だが、終盤になると怒涛のハンターぶりを発揮する。
チーム内に混血児がいたり、普段はあっけらかんとした集三枝子がブルジョワ令嬢にだけは異常なサディズムを発揮したり、尾藤イサオの「ここ以外、他に行き場はねえよ…」という呟きに一同が優しげな笑みを見せたりと、後半になると色々と野獣達の人間性も描かれていく。
しかし、直後に「俺の獲物は"獣”なんだよ」と渡哲也がライフルを手入れするシーンに移る演出が上手い。
いかにキャラが立っていようと、女を輪姦して殺すような野獣どもは全員ブチ殺すべきなのだ。
尾藤イサオの腕を吹き飛ばし、川地民夫の臓物を抉りだし、藤竜也のド頭をブチ抜く。
グラインドハウス的、なんと気持ちの良いエログロ勧善懲悪。

不満点は、中盤で川地民夫に潰された手の対処法。これが「ひたすら我慢」だったのはちょっと残念。
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