Kuuta

怪獣総進撃のKuutaのレビュー・感想・評価

怪獣総進撃(1968年製作の映画)
3.2
初見。1968年公開の9作目。キングギドラフルボッコ映画として有名な今作。怪獣ランドの制御が効かなくなり、世界中で怪獣が大暴れする。ゴジラがニューヨークを襲っていたのは意外だった。

9作目にして、いよいよ虚構が現実を上回った感。日本の観客が怪獣映画を見慣れてしまったからこそ、日常として飼い慣らされた怪獣=怪獣ランドの設定なんだと思った。こうなると、登場怪獣の数を増やすとか、世界中を舞台にするとか、量を増やす方向に打って出たのも、流れとしては仕方ないのかなとは思った。

リアルな怪獣の怖さを捨てる、ある意味での一線を超えてしまったからか、人間の行動が非常に淡白に、ドライに見える。怪獣のコントロール手段を得た人間は、キラアク星人同様、怪獣を暴力に利用する。そこに葛藤は一切ない。怪獣は単なる武器のような、ロボットのような扱いを受けている。タイトル回収となる「コントロールを外れた怪獣の、キアラク星人への総進撃」の根拠を「本能」としていたがイマイチ納得しにくい…(暴力といえば、イヤリングをむしり取る所無駄に痛そうだった)

キングギドラの首や尻尾の痙攣まで映しているとは驚きだった。正直、凄く後味が悪かった。深読みかもしれないが、あっさりと暴力に便乗する人間への皮肉のこもったカットなのかもしれないと思った。

オールスター映画ではあるが、新造した怪獣は少なく、スーツの痛みが激しいのも印象的。怪獣総進撃マーチに乗せて登場するレトロフューチャーなムーンライトSY-3号はかっこよかった。

ミニラは強い親を盾に調子に乗る悪ガキのよう。妙にカメラを意識している感じが憎らしい。バランもバラゴンも登場が一瞬過ぎて笑った(凱旋門を「バラゴンが壊した」というセリフの後に、何故か地中から顔を見せるゴロザウルスに笑う)。モノレールに巻きつく以外のマンダが見れるかと期待していたが、他に見せ場はなかった。

雑な扱いを受ける怪獣が多い中、アンギラスが目立っていたのはとても良かった。今作を機にゴジラの相棒ポジションを築き始める。決戦の先陣を切る潔い姿勢が全く報われていない。こういう大味な映画でも噛ませ犬に徹している。トレードマークのはずの背中のトゲトゲをキングギドラが全く気にしておらず、容赦無く踏みつけられる不条理が素晴らしい。64点。
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