中国の伝統的な古典演劇、京劇。
秦の始皇帝の死後、項羽と劉邦が天下を争う楚漢戦争、項羽と愛妾(虞美人)を演じる2人は京劇の養成所で育つ。項羽役の段小樓を実の兄のように慕う、程蝶衣の兄弟愛はやがて友情を超えたものになっていく。時代に翻弄されながら移りゆくそれぞれの愛憎劇、ロマンスを描く。
中国史には全く明るくないが、横山光輝の「項羽と劉邦」を読んでいたので覇王別姫の読解の助けにはなったが知らなくても楽しめると思う。文化大革命、共産主義の自己批判による相互監視による粛清の悪しき構図(例えば日本においては連合赤軍の一派が自己批判という思考法をエスカレートさせ、お互い密告しあい内部崩壊が進み、残虐な仲間内での大量リンチ殺害で29人中12人が亡くなった山岳ベース事件)などは(一般教養ではなくなってきているが…)知っておくと炎のシーンの狂気的な一幕は違和感なく入ってくるはずだ。
親に捨てられその身一つで運命を変えようとした程蝶衣は私生活までも虞姫に憑依し、演技に運命を投げ打ったが、日中戦争、文化大革命という激動の時代に翻弄され、諦観を持って運命を受け入れるしかなくなる。
程蝶衣の純なる切ないストーリーなのだが、最後のシーンは男としての運命を自ら変え、女(虞美人)として運命を変えたひとつの人間としての意志を見た気がする。