【複雑さを生きるために哲学は必要だ】
※昨年CPH:DOXで観た時の感想です。
CPH:DOX2022で昨年における『Mr. Bachmann and His Class』枠として『YOUNG PLATO』が配信されていた。教員免許持っている身としてこの手のドキュメンタリーは好きなので早速観てみた。
北アイルランドのベルファストではカトリックとプロテスタントの対立が根深く残っており、ケネス・ブラナーの『ベルファスト』でも描かれている。本作はベルファストにあるホーリークロス校のMcArevey校長は、哲学を用いた授業で、複雑なベルファストを生き抜くヒントを伝授しようとする。過去の紛争の動画を観せる。「過去は洗い流すことができない。」と語った上で、カトリックとプロテスタントの違いを生徒からの思索から引き出す。喧嘩が行われれば、当事者を前にヒアリングが行われる。過去を知る、思索する、そして議論することこそが諍いと折り合いをつける最良の薬であり、哲学者の理論はそれを手助けするものだと分かる。
本作を観ると、先生はまさしく哲学を自分の中に取り込んでいる。哲学とは決して偉人の言葉/理論をありがたく甘受することではなく、理論を道標とし、自分の思想を解体再構築して前に進むことである。この再構築のスキルを鍛えることで、対立する他者との折衷案を導くことができ、それがマクロレベルになると世界平和に繋がる。
McArevey校長の振る舞いから哲学の実践法を学びました。