パケ猫パケたん

アッシャー家の末裔のパケ猫パケたんのレビュー・感想・評価

アッシャー家の末裔(1928年製作の映画)
4.5
エドガー・アラン・ポオの恐怖小説『アッシャー家の崩壊』を基とした、サイレント映画の傑作。ポオ原作の映画の中でも、本作を超える映画は無いかもしれない出来。光と影、濃霧と泥土、有機物と金属、エロスとタナトスが乱反射する。

撮影に関しても素晴らしく、広い室内を捉えたパン・フォーカスの切れ味と峻冷な美しさ(パン・フォーカスの技法はサイレント期にもあったんだという、映画史のお勉強)。かと思えば、ソフトであったりハードであったりのクローズアップの応報。シャロウ・フォーカスの元、歪んだ背景を写すことにより、くるいつつある男の心証を描写するなど、視覚的に緩急自在で、ほぼパーフェクト。

冒頭の酒場で、あのアベル・ガンス監督のカメオ出演があり、主人公の女性がガンス夫人。なかなか美魔女たん。脚本段階ではルイス・ブニュエルが参加しており、映画史的にも貴重な資料。

映像描写も印象的。無限なカーテンの揺れ、そして風に吹かれ飛んでいく紙くずたちの詩情など、まるで『サタンタンゴ』や『暗殺の森』を彷彿とさせる。かなりベルトルッチ風で素晴らしい。

古びた蝋燭の炎、燃え尽きた蝋燭、女性の肖像画、甲冑、往来する時計の振り子、猫、蛙、フクロウなど、個々の描写や存在感が際立っており、等価等質に描かれており、有機物と無機物が混合していく。それは、まるで、人間は鉱物などの無機物に帰化したいという、「タナトスの本能」を視覚化したのであろうか。実際、軽く目眩(めまい)がした、秀逸。

ただ、予算的な理由なのか、ラストシーンが古城たるアッシャー家の崩壊に見えない。電飾に飾られたクリスマスツリーの炎上みたいな。ミニチュアでの崩壊でも良かったのに見せて欲しかった。ミニチュアならば、ブニュエルの映画みたいに成ってしまう訳ですがo(^o^)o♪ しかし、とにかく映画のご先祖さまサイレント映画サイコウ(^o^)♪