“サスペンスを科学する”雰囲気のある作品タイトルがいいですね。『真夏の方程式』('13)なんかもそうだけど、口にしてみただけで賢くなった気分にもなるし……。ただ本作は「犯人はお前だ!」的な爽快さというより、普段は隠しておきたい心の影が露呈した時の動揺を追体験する感じが近かったです(そういうのも好き)。
エモーショナルな演出を削ぎ落とした一見地味な印象がありますが、中弛みを感じることなく最後まで見入ることができました。2時間半と長尺なのに不思議。
冒頭で起きた夫の転落死。容疑者となった妻は「やったのか」「やらなかったのか」。観る側の気持は「やったでしょ。…いや、セーフだわ。やるはずない」と見事に振り回されます。それがまた絶妙なさじ加減なので、ずっと集中してられます。そのうえ観客には一切のカタルシスをもたらさない潔さも嫌いじゃないです。
「やったのか」「やらなかったのか」よりキッチンで夫婦が揉めていたシーンのザンドラ・ヒューラーの演技のほうが一見の価値あります。私は勝てる気がしない。