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関心領域のmizukiのレビュー・感想・評価

関心領域(2023年製作の映画)
4.4
私は歴史の知識が超浅い人間だけど、あの立ち上る煙の意味はわかった。頑張って覚えようとしなくても脳裏に焼きつくくらい、ショッキングだったということ…。嫌でも忘れない、痛ましい歴史が今後生まれないといいなあとおもった

人って、慣れるとなんでもできちゃうんだろうね。塀の向こうの収容所から拷問の始終が聞こえてこようが、悠々と庭の草むしりができる。歴史を知った上だと無慈悲に見えるけど、渦中だったらただの日常で、良いも悪いもない。だって私たちも蚊とか普通に殺すし。お茶の中で虫が溺れてたって、ちょっと可哀想と思うくらい。いちいち悲しんでいたら身がもたないから。
'アウシュヴィッツから離れたくない 単身赴任してよ、私は残るから'ってどっかの妻が言ったのグロかったな。人を焼いた煙が立ち込めて鼻を摘むけど、そんなの大した事ないと思っている。


A24らしさめっちゃあった。この世で一番怖いのは人。自分も人。全否定も全肯定も嘘になる。バランスを取るしかない。戦争は絶対しちゃいけないけど、自分が人殺しに加担しない保証はない。自然に生きているだけで人を殺してしまう環境かもしれない。その後、良心の呵責に耐えられるかな。全部を否定した時、その人は今と未来を生きられなくなる。絶対悪を、いつ何時でも押し通すことって、本当に正しいのかなって考えちゃう。
反省と納得・許容によって、惨事を繰り返さない意志を持てるフェーズにいきたいね。
映画の構成も相まって、私も未来を紡ぐ当事者の一人なのだと意識せざるを得ない。ユダヤ人迫害の過去を眺めている、その私たちも眺められているような作品だった。
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