◆概要◆
1945年、アウシュビッツ収容所の隣に誰もが羨むような豪邸で幸せに暮らす収容所所長ルドフル・ヘスとその家族の姿を描いた作品。
◆感想◆
本作には特にストーリーと呼べるほどのものは無く、アウシュビッツ収容所の隣の住居に暮らす家族の暮らしをひたすら観続ける内容となっており、有刺鉄線を貼られた収容所の中は一切映さず、家族の幸せそうな暮らしの中に時折、叫び声や監視員の声がノイズのごとくは挟まっていて、そのギャップが観ている側の気持ちをざわつかせるものになっていました。
映される収容所所長のルドルフ・ヘスの一家は幸せに暮らしていて、子供たちが無邪気にはしゃぐ姿は収容所の隣であることを除けば、理想的な暮らしを送っているように見えます。しかし、そこには確実に収容所が存在することが壁向こうの黒い煙や聞こえてくる音から認識せざるを得ないものになっていました。
しかし、ヘス一家はたまに隣の状況を会話に少し出る以外、全く意識しておらず、妻のヘドウィグに至っては理想の住居として固執しており、ルドルフの転属を拒む姿は異常に思えました。途中でヘス家の祖母が姿を消すのですが、祖母には収容所で行われていることが認識としており、その暮らしに耐えがたいものがあったのではないかと感じました。
ヘス一家が収容所の隣で暮らし始めたときの状況が分からないので確かなことは言えないのですが、妻のヘドウィグや子供たちはその環境に慣れてしまい、無関心になってしまったのではないかと思う部分が多々あって、観ていて何とも息苦しい作品でした。ドイツ人とユダヤ人、ただそれだけの違いでこの状況が生まれたことの恐ろしさを体感できる作品でした。
鑑賞日:2025年3月23日
鑑賞方法:Amazon Prime Video