zhenli13

少年、機関車に乗る 2Kレストア版のzhenli13のレビュー・感想・評価

4.1
桜丘のユーロスペースで初公開時に観た。30年前ですってよ…本邦ではVHSでしか観られない本作、追悼上映もユーロスペースだった。80年代初頭くらいの映画だと思ってたら1991年だったのか。
実は本作を観るたびに寝落ちしてしまうので、断片的にしか覚えてなかった…すごくいい作品なんだけど列車の音が眠くなるのよ。でも今日は寝なかった。

機関車って公共の乗り物だと思うんだけど、機関士が私物化している点ではアルドリッチの『北国の帝王』と双璧を成すかもしれない。運転席に食べ物を置いてて、チャパティのような大きな薄いパンに何かを入れて四つに折り畳んで「デブちん」に渡すのがなんだか美味しそう。

列車の連結部を繰り返し映している。女性が機関車を降りて遠くの道を歩いていると、迎えの恋人らしき男性のバイクがやってきて後ろに乗せてまた来た道を戻っていく、その間機関車はどんどん遠ざかっていって超ロングショットになり、もうこれは清水宏だな。
乗り物によって生まれるさまざまな方向性や空間の面白さ。ひとつのショットの中に右から来たバイク、左から来たバイク、手前から奥へ伸びる線路に止まっている貨物列車(金網がついてて中で子どもたちがサッカーをしている)までカメラですーっと舐めていく。その貨物列車の隣の線路に入ってきた機関車が主役というふうに、じつに豊かで見応えがある。
馬が3頭、機関車を先導するように線路上を走っている。馬はだんだんちりぢりになっていきながらカメラがふーっとティルトしてなだらかに曲がる線路の行く先を映すところの広がりがとても気持ちいい。そして何といってもラストの、遥かむこうに豆粒ほどのファルーが機関車を追いかけ、うねうねと道を越えて走りついに飛び乗るショット。
それと、壊れた屋根に敷いたビニールに溜まる雨と楓のような葉っぱがずっと貼り付いてるショットが何度も出てくるのが妙に記憶に残る。

レストア版は本作のフィルムの劣化したような朧な感じを残している。
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