このレビューはネタバレを含みます
神も仏もないな。
この作品は優しくも、悲しくも、憎らしくも、その解像度を上げてくれた。
作中に多く登場した、「理由は?」「意味不明」「普通は」「ありえません」「若いから」
多少の誇張はあるのだろうが、胸糞助監のせいで早々に観ていられなくなりそうだった。
現実の尺度を、己のものさしで図る。
現実っぽくみえるリアリティこそが受け手の解釈上のリアルになりうるのか。
ゆえに、本当のリアルがそこにあっても、それを疑ってかかる、そこは認めない、見たくない、そこから目を背ける。
情けない、ダサい、見苦しい、しょうもない、でも、残念ながら、そいつらは不条理なほどに強い。
その強さはきっと、人たるの一部を犠牲にして得ているモノなんだと思う。
上に立った者、立ったつもりでいる者が、
ひどく空っぽなことが悔しい。
想定内の物語の、なにがおもしろい?
意味がわからない、だからなんだ?
目的、理由、意味、もううんざりだ。
みんな俳優です。
本音や本心、真実というと分人主義とは相容れない部分があるかもしれない。
けど、嫌々演じている自分、被りたくない仮面、肯定したくない分人、そんなことだってあるだろう。
時には、社会情勢の大きな余波を受けることで、普段なら生まれないそれだって顔覗かせるかもしれない。
当時よくいた、正義中毒、マスク警察。
シンプルにして強力な大義を誰しもが手にできたあの時期、従う、守るだけでいいもんね。けど、子どもな分だけ余計タチが悪いようにみえた。
まだ広がっている過程にある視野が、不安や、目に見えない恐怖、やり場の無さによって、さらに狭くなってしまうから、あの時期の恐ろしさのひとつとも言える。
本来の人たるとは何かを考えた時、失ってはいけないモノはあると思ったし、それを主張できることはかっこいい。
人たるを守りながら、この資本主義の世の中を生きることはすごく難しいように感じる。
なんにせよ、この作品を通してやっぱり、
松岡茉優の演技は好きだ、と改めて思った。