Matilda

タイタニックのMatildaのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
5.0
TOHOシネマズ日劇閉館に伴い開催されているさよなら日劇ラストショウへ。タイタニックは家にDVDがあるのですが、スクリーンでは初めての鑑賞。3Dをやっていたときに行かなかったので今回は思い切って行ってみましたが大正解でした。あの日劇スクリーン1で約900人の方と一緒に観るタイタニックは最高。一生忘れられない思い出になりました。

誰もが知る名作タイタニック。私が今作を初めて観たのは確か小学生のとき。母親と一緒に観て、気まずいシーンがちらほらあったのを覚えています(笑)でも、普段はほとんど泣かない母がこの映画を観終えたとき泣いていて、とてもびっくりしました。当時の私には映画を観て感動、とかはまだ難しかったので理解できなかったんだと思います。その後、中高時代には、寝込んでいるときやまとまった時間が家族でできたときによく今作を観ていました。そのときも感動はしましたが、今回以上ではありませんでした。

今作を観るのはこれで5回目以上。展開もラストも分かっている。それなのになぜ、また私は感動し、涙するのか。それについて今回はちょっと考えてみました。

正直、私は最初ローズのことがあまり好きではありませんでした。
近年言われているジャックも助かった説に関しては、私はあの板に2人乗ることができたとしても、あのパニックの中でバランスをたもつには下で少しでも支えている誰かが必要な気がするので現実問題2人が乗るのは厳しいのではないのかな、と思っています。その点について、ローズを責めようとは思いません。
しかし、ローズはこの映画では最初から最後まで、誰かに守られて生きているんですよね。母親からのプレッシャー、婚約者のDVなど辛い経験をしていることは確かですが、それでも不自由ない生活を送り、そこから逃げたくなっていたときにちょうど船上で出会った青年と夢のような恋をし、そしてその青年のおかげで生き残ることができた。よく見ると後半のジャックはいつもローズのことばかり気にかけているんです。逃げるときも常にローズ優先。それがパニック映画のヒロインとしての立場なのかもしれませんが、ジャックはローズに心酔し、尽くしきっているんですよ。そして最後は、ローズを安全な場所に連れて行き、自らは凍死してしまう。
家族や婚約者、お金、地位に守られていたローズは、それを手放してジャックのところに行きます。しかし、彼女を守るものがジャックに変わっただけなように私には思えたのです。

そう考えていたのは、中高生の私。レオ様がかっこよすぎる故に、彼を死なせてしまった彼女のことを多少なりとも恨む気持ちがあったのかもしれません。しかしローズもかなりの代償を支払っているということに、恥ずかしながら今回初めて気がつきました。
ローズは、お金や地位、お行儀よくお嬢さんでいれば何もかも与えてくれる家族、すべてを捨ててジャックと生きようとしました。あのパニックの中でほぼ駆け落ちのようなことをした2人に待ち受けていたのは死。新しい世界で2人で生きようとしていたのに、その輝かしい生の前に、死が待っていたんです。ギリギリのところでローズは生き残りましたが、すべてを捨ててまで一緒にいたかったジャックがいない人生を生きるのはどれだけ辛かったことでしょう。
ラストの方で、生き残った人達の顔が次々とうつしだされるシーン。客を捨てて逃げた責任者、嘘をついて船に乗った金持ち、助けに行こうとしなかった女性たち…後悔したのは彼らだけではない。彼らと同じように、ローズも後悔していたのだと思います。自分がああしていれば、こうしていれば。そう何度も、自分を責めたのでしょう。
しかし、彼女はジャックに言われたように、自分の人生を歩むことにした。やりたいことをやって、人生を謳歌しました。それが彼女なりの、ジャックへの罪滅ぼしだったのかもしれません。ある意味では、死ぬよりも辛い運命を彼女は背負ったのだと思います。

私が今回今まで以上に感動したのは、今まで共感できなかったローズに共感し、彼女が負った運命の重さに気づくことができたからでしょう。
船上で偶然出会った2人はその後の人生を共にすると決意するほど惹かれて合い、熱い恋をする。沈まないはずの船が沈む緊急事態に2人は懸命に立ち向かうも、生と死に別れてしまう。生き残った彼女は絶対に辛かったはずなのに、何十年も、ジャックのいない人生を生きている。このロマンチックすぎるラブストーリーと、その後に迎える壮絶な運命が、私の心を強く揺さぶるのです。

この映画の中で私が好きなシーンは2つあります。
まずひとつめは、ローズが救命ボートに乗り、ジャックを見上げるシーン。レオ様の背には発煙信号が花火のように光ります。(ここではいつも花火がバックということで華麗なるギャツビーのワンシーンを思い出します。)彼を見て、彼女は一緒にいたいと心から願う、そして行動に出るんです。その後の再会シーンも大好きです。なんてバカなことするんだ!のときのレオ様の表情、きっと本当に恋をするってこういうことなんだろうな。
2つめはラスト。あのシーンがローズが亡くなって天国へ行ったという意味なのか、夢の中なのか、2つの解釈があるそうですが、私は前者でとりたいと思います。ローズはジャックとの関係を祝福されたかったでしょう。そして隣にいてほしいのは、ディナーのときのように着飾った彼ではなくありのままの彼だったはずです。ウェディングドレスのような白いドレスに身を包み、愛する人と見つめ合う姿は幸せ以外の何物でもありません…。ここで完全に号泣でした。

公開当時私はまだ2歳。その私が劇場でこの作品を観れたこと、しかも日劇の大きなスクリーンで観ることができて、本当によかったと思います。間違いなく、今作はオールタイムベストです。
とても辛い映画だけれど、めちゃくちゃ大好きです。
この機会に、他のタイタニックについての作品もみていきたいと思います。
Matilda

Matilda