HicK

タイタニックのHicKのレビュー・感想・評価

タイタニック(1997年製作の映画)
5.0
《The ムービーマジック》

【ベタでもやっぱり】
間違いなくマイベスト級の作品。物語に吸い込まれてしまう様な映画の魔力が詰まってる。

【ファンタジー×残酷な事故】
記憶・映画史に残る甘いロマンスと、毎度鑑賞が辛くなるほどの数えきれない無惨な死。史実を扱う作品としてこの振れ幅が今作の意義でもあり、評価されてる点にちがいない。フィクションである主演2人が史実を食う事無く、ストーリーテラーとして機能してる証拠。

【より切ない現代視点】
現代から見た物語のため、映画開始早々、「タイタニックの沈み方」を細かくネタバレ説明。この演出が好き。あくまでも「事故より人間ドラマ」という趣旨。終盤では「話で聞いた実際の出来事」みたいな錯覚もある。「沈没が前提」を強調している事で、微笑ましい場面でもこの後の悲劇を思って更に切なく感じる。

【社会の縮図】
現代の社会にも通じるような、社会の縮図として秀逸な皮肉になってるタイタニックの階級社会。切なくもあり腹立たしくもあり…。この悲劇の大きな教訓として「命に階級は無い」と後世に伝える大きな意義。このあたりも主演2人が優秀なストーリーテラー。

【群像劇】
周りの群像劇も魅力がある。一番好きなのは「不沈のモリー」。また、キストラレベルの役でも冒頭や船内、沈没シーンでしっかり繰り返し登場しているところも好き。そして、それぞれの最期もきちんと描かれ、見るのがやっぱり辛い。役名がつく大半のキャラクターは事実に基いて描いているそうで、解説を聞き、一人一人に興味をそそられた。

【1番の感涙ポイント】
毎回ラストシーンでグッとくる。寝ているローズの横に飾られた写真。語らずとも彼女の人生を想像させてくれる。ジャックとの約束を守り、幸せを掴んだ彼女に涙。

そこからタイタニックの大階段で全員集合。彼女の夢なのか、死後の世界なのか、または作品として観客への「ありがとう」なのか。映画史に残る感動的なカーテンコール。

そしてセリーヌ・ディオンのエンドソング。完璧な幕閉じ。この一連の締めが本当に秀逸。

【その他、好きなシーン】
・アイコニックな船首でのキスシーンから現代の沈没船にトランジットしていくシーン。今作瞬間最高ファンタジーから歴史上最大級の残酷な事故に引き戻される落差が好き。

・ジャックの「I'm the King of the World!」や2人のキスなど希望を感じるシーンはいつも船首。ローズの自殺未遂や最後に大切な物を捨てるシーンなど過去を精算する場面は船尾。など場所の演出。

・氷山にぶつかる時、衝撃で2人のキスが妨げられる。この後の展開を暗示してるかのような描写。

などなど、いろんな解説を聞いてさらに好きになった。

【とにかく音楽!】
初めて買った映画サントラ。素晴らしい楽曲の数々。セリフがない場面では音楽が主役として頭にこびりつく。美しいメロディー。清々しい雄大な楽曲も、軽快で高揚感ある楽曲も、この後の悲劇を思うとどこか切なくも感じる曲調だったりするのが好き。これだけ音楽が主張していても役者が喋る時は無音のシーンが多く、メリハリが素晴らしい。

【色褪せない視覚効果】
CG技術が限られていたお陰で、模型等を利用したSFXを多用、質感がリアル。今見ても全く安っぽく無い。豪華なセット美術、精巧なタイタニックの模型、ミニチュア内装、実際に傾く部屋、そしてなんとライフサイズのタイタニック号…。もう、なんでも"実物"を用意。すごい。タイタニックの全景など美しさに釘付けになる。どうやって撮ってるんだろ、と感動してしまう。

【キャメロン】
映像特典を見て驚いたのが、キャメロン監督は想像を超えるほどのタイタニック有識者だった事。その熱量が現場にも表れたのか、過酷な撮影現場の過激な裏話は結構色んなところに上がってたり。ただ、そこまで引っ張る人でないと会社も前代未聞の予算は与えないだろうなとも思う。専門知識、明確なヴィジョン、そして自信。「この人に金を賭けてみたい」と思われたんだろうなぁ。

【総括】
青春、恋愛、群像劇、アクション、パニック、ディザスター、悲劇、階級社会ドラマ。全部入り。

高揚感、切なさ、清々しさ、豪華さ。怖い、悲しい、恐ろしい。親しみ、憎しみ。スカッと、モヤッと。絶望、希望。全部感じた。

巨額の予算、巨大なセット、大勢のエキストラ。魔法のようなSFX技術、魔法がかった音楽。そして、有識者レベルの知識を持つ監督と彼の明確なヴィジョン。全てが揃い、全てが噛み合う。

本当に奇跡の作品。ムービーマジックの最高峰。「アバター」もそうだけど、もはやここまでの材料が揃い、手間ひまと巨額を掛けると「見る」では無く、貴重なものを「見せていただく」という感覚にもなってしまう作品。
HicK

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