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乱れるのtakのレビュー・感想・評価

乱れる(1964年製作の映画)
4.5
成瀬巳喜男監督作は「浮雲」しか観たことがなかった。「浮雲」はすごく好きで、成瀬作品をもっと観てみたいと思っていた。友達の勧めもあって「乱れる」をセレクト。

戦後、亡き夫の実家である酒屋を切り盛りしてきた未亡人。スーパーマーケットが隆盛となっていく中で、お得意先を繋ぎとめようと日々働いていた。大学を出たけれど実家を手伝いもせず、遊んでは迷惑をかける義弟は家族の悩みの種だが、彼には彼の思いがあった。ある晩、彼女は義弟に思いを告げられる…。

ストーリーだけならいわゆるよろめきドラマなのだが、告白されてからの揺れる気持ちとヒロインが決断に至るまでの切迫した様子が見事。「張込み」でも思ったことだが、家族に囲まれて役割をこなさねばならない「家」と、そこから解放されて「女」を見せる役柄を演じる高峰秀子はほんとうに素敵だ。

家を出て行く決意をするところで、エンドマークが出てもまったく不思議ではないのだが、そこから予想を超えたクライマックスが待っている。ラストシーンの緊張感と高峰秀子の表情は心にきっと刻まれるだろう。義弟のガールフレンド役はこの後ボンドガールとなる浜美枝。意地悪姉さん草笛光子は、まさにイメージ通りの好助演。
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