台詞が少ない作品なので、前半は話の筋道が見え辛かったのだが、映画監督が、かつて撮影中に姿を消した俳優と数十年ぶりに再会を果たす辺りから作品世界に引き込まれる。
映画作りを題材にした映画という好みの設定もあるのだが、登場人物の表情をしっかりとらえる画面構成と、必要最小限の台詞が生み出す人間臭さが、近年の映画に於いては珍しく、どっぷりと身を委ねて鑑賞できてしまう。この感覚は何とも久しぶり。
長く離れ離れだった2人は積極的に会話を交わすわけでも無く、言葉少なに互いの心を探り合っていく。本来人間同士の会話ってこういうものなのだと改めて感じたり。
どうやら名の通ったベテラン監督による久々の作品なのだそうで、その経緯に関わる部分は分からないのだが、あまりカメラが動かない、言い換えればクラシカルな作風に心酔する170分だった。