ビクトルエリセ監督作品。
自己言及的であり、メタ的な、映画についての映画。
冒頭のおそらくフィルムで撮られた映画内映画からグッと引き込まれる。
そして、現代パートになり、失踪した親友を探す。ミステリーのような物語の運び方が観客の興味を持続させる。
ラストは、映画についての深い洞察、タイトル通り「瞳をとじて」観ること、逆説的な哲学問答のようなテーマを浮き彫りにさせ終わる。
フィルムや映画の終焉についてを、エリセという年老いた人が撮った、と言えばそれまでなのだけれど、やはりそれだけで終わらない神秘性のようなものが本作にはある。
ただ、映画として面白いかと言われるとやや首を傾げてしまう。前半はミステリー的な面白さで引っ張られていくのだが、中盤の失速は否めず、終盤も盛り上がりに欠ける。エリセが信じる「映画」を、本作では体現できているのかもしれないが、1観客の自分としてはもう少し、物語のツイストや、面白さが欲しくなってしまう。
なにより、現代パートの映像の質感がテレビドラマと変わらないところも残念だった。頻出する会話パートも、切り返しと多少のアップだけで、感心するような演出が見受けられなかった。「ミツバチのささやき」「エルスール」で観られた映像美をそこまで感じられず、かといって物語の面白さもあまり感じられない。
エリセの新作を待ち望んだファンにはたまらない作品かもしれないが、冷静に鑑賞した自分としては、そこまで好きな作品ではなかった。