このレビューはネタバレを含みます
ゲイの恋人同士が、あぁ別れるんだなぁって雰囲気の中突然掛かってきた電話により、元恋人がバイクで事故に遭い病院へ搬送されたらしい。
目の前にいるよ と彼の財布を盗んだ犯人が事故に遭ったんだと考える2人だったが…。
同棲していたアパートから出て行くために荷造りをしていたトリスタンが電話を受けた事から一変する。
まるで、"生きて触れる走馬灯"として目の前に現れたイアゴ。
こういうのって、どうしたって自分ならどうかな…って考えてしまう。
今出張に出ているわたしの夫が突然帰ってきて、あれ~どうしたの?から警察から電話が…って想像すると胸の辺りがゾワッとしてしまう。恐怖と言うか、別種の恐怖で。
じゃあ今目の前にいるのって…?って事より、自分を置いて死に向かう伴侶という現実が恐ろしい。もう、死ぬ気で踏ん張れー!としか言えない。わたしやアニマル達はどうなるー!死んどる場合かー!って。わたしより後に死んでくれって言ったじゃな~~い。
ただ、このイアゴとトリスタンは今まさに別れを迎えて別々の道を歩もうとしているのよね。
途中までのなんとなく気不味い雰囲気は、言われなくても あぁ同棲解消かなぁってなる。
でもそこで事故に遭ったイアゴが徐々に自我を失っていくかのように、2人の思い出の中の当人だけの気持ちを抜き出して一方的に喋りまくる。知らない人だったら相当な恐怖を覚えるそれはしかし自分だけに向けられていて、このなんとも言えない…別離を選んだはずの距離感、しかし間違いなく死んで欲しいなんて思ってもない相手の幻を相手にした場面で…、トリスタンは最良の選択をしたんじゃないかなぁ。
無責任に愛しているとも囁かず、まだこの先の人生があるのだと語り掛ける。
愛は終わっていたのかも知れないけれど、イアゴが生き延びた事によって彼らの運命もまた少し変わるんだろう。
けれど、言ってしまえば恋人同士に過ぎない、それも別れ際の彼らの今後がこの出来事によってただ別れるよりも歪な関係になってしまわないだろうか…とか、そんな事も考えてしまう。
これはロマンチック感とかを置き忘れてきてしまった女の思考なんだろうか…。
もしイアゴに両親や兄弟がいなかったら…?電話してきた女性がもう別れたのだと知らなかったら…?もしイアゴに重篤な後遺症があったら…?
そんな事は考えなくても良いのかも知れないし、ただ命が助かった事を喜ぶのが大前提であるのだけれど、イアゴのその後の生活まで考えてしまうこの感じ…助かって良かったのは間違いないのだが…みたいなとこまで考えてしまう。