たく

ファンフィクのたくのレビュー・感想・評価

ファンフィク(2023年製作の映画)
3.5
生き辛さを抱える高校生たちの不安定な心情を綴ったポーランド映画で、孤独な二人が世間の偏見を乗り越えて自己を受け入れる姿が繊細に描かれてた。周囲が男らしさ女らしさを外見だけで判断する描写が強調されてたのは時代錯誤に感じたかな。

「ファンフィク」とはファンの手により実在と架空の人物が登場する短編小説のことで、トシアが始業式で見かけたレオンの嘔吐する姿に自己との共通性を感じ、彼を自作のファンフィクのキャラクターとして登場させるんだけど、そこでのレオンが女装してるのが早くもトランスジェンダーである自分との共通性を無意識に予感してることを示す。やがてトシアが自己の性自認に気づき、男性名であるトシェクと名乗っていく展開で、ちょっと驚いたのは髪を短くしたり古着(「ホち」って何だ?)を着るトシェクを周囲が「女らしくない」ってしつこく揶揄するんだよね。今どきボーイッシュな女性はいくらでもいるし、ポーランドはそのあたりの文化の違いがあるのかな?

本作はトシェクとレオンが自己の性自認を受け入れていく話が軸となってて、同時に彼らの親が彼らのことを認めてあげられるのかっていう問題提起になってた。ここでヒール役として登場する学校の先生がまあ胸糞悪くて、終盤でクラスの皆が一丸となって先生をやり込めるのがスカっとした。ファンフィクの演出は序盤と終盤で少し出てくるだけで、トシェクの心の逃げ場だったファンフィクの小説を最後に昇華させるのがジーンときたけど、ちょっと取って付けた感はあったかな。
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