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恋の画集の3104のレビュー・感想・評価

恋の画集(1961年製作の映画)
3.9
サスペンスや推理モノのイメージが強い野村芳太郎だが、実はコメディでもその才覚を発揮していた!・・いや単に自分が知らなかっただけか。

恋人との結婚資金工面に悩む男が、偶然ある男の不倫現場を盗撮しそれをネタに恐喝をする。しかしこの男が実は恋人の上司だったことから、周囲を巻き込んだ予期せぬ騒動に発展していく・・。

監督自身と山田洋次による巧みな共同脚本がつとに秀逸。
前半~中盤にかけて描いた「線」が伸びて互いに交差もし、やがてひとつの場所に束ねられる・・すなわち騒動の主要登場人物達が一堂に会するクライマックス部の展開がことさら面白い。
誰が誰に対しどういう感情を抱いているのか。誰が誰に対し何を、そしてどこまで知っているのか知らないのか。誰が誰に対し何を要求しているのか・・その感情や立場の二転三転が決してこんがらがり停滞することなく展開される様が小気味よい。細かい状況の変化に揺り動かされ、劇場内ではあちこちで平和な笑いが起こっていた。

主演は前年『青春残酷物語』で破滅に突進する2人を演じた川津祐介と桑野みゆき。あちらとは打って変わってコメディというまな板の上に乗り、若くキュートな2人を演じている。
恐喝される男・佐野周二の妻役に藤間紫。早とちりで気ぜわしく話を掻き乱す役どころが妙にフィット。桑野みゆきの父親役の三井弘次が、とっちらかりがちな物語に対し若干の「重し」のような存在を果たしている。
佐野が事件解決を相談する友人の弁護士役に加藤嘉。なんとも狡猾というかクセ者というか、結局はオイシイところをかっさらっていく印象。

様々な色や太さの「線」を無理矢理束ねたり切断するようなやや力技的なラストだがそれもよし。最後の最後のちょっとした「オチ」が心地良い。