フラハティ

パラダイスの夕暮れのフラハティのレビュー・感想・評価

パラダイスの夕暮れ(1986年製作の映画)
3.7
アキ・カウリスマキ、労働者三部作の一作目。


ゴミ処理場の職員である主人公が出会う、スーパーの女性。
一瞬にして恋に落ちる。

労働者階級から見える、当時のフィンランドの社会。
高級レストランでは、ゴミ処理場の職員は入れない。
おしゃれな服屋でも、嫌な視線を向けられる。

金持ちの生活。
きっと良いことだろう。
高級レストランで、おしゃれな料理を口にし、おしゃれな服屋でおしゃれな服を買う。
酒も高いものばかりを飲む。
男も女も金に群がる。

庶民の生活はどうなのか。
いつも働きづめ。
食事も自炊が多く、たまに行っても安いレストラン。
映画を観て、安い酒をたくさん飲み、眠りにつく。
大多数の人間はこんな生活を毎日続けている。
でもやっぱり、そんな“普通”がいかに幸せか。


カウリスマキ特有のオフビートな世界観は、特異だけど温かい。
ふとしたやりとりもウィットに富み、不器用な人々も愛らしく映る。
死ぬことまでもコメディチックに見えてしまうのは如何なものか。
本作で印象深い主人公のマッティ・ペロンパーは、亡くなるまでカウリスマキ作品に登場。
そしてカウリスマキと親交の深いジャームッシュ作品にも登場していたね。

こうやってみると、この作品からカウリスマキの作風は変わっていないねぇ。
それがなんか安心というか、すごいところというか。
主人公も労働者階級として、決して金銭的にも恵まれているわけではないが、確実に幸せというものが現れている。
飄々とした作品のようだけど、監督の気持ちは熱い。
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