あゆみ

アポカリプトのあゆみのレビュー・感想・評価

アポカリプト(2006年製作の映画)
4.3
すごい映画だった…
怒りのデスロードみたいに主人公が行って帰ってくる映画なんだけど、マックスと違ってジャガー・パウは行きと帰りで全然違う人になっている。と言うか、行きは自分が何者なのかはっきり分かってない感じだったのに、帰る途中で俺はジャガー・パウだ!と宣言できるようになって、新しい人が生まれていた。(その頃奥さんには赤ちゃんが生まれていた)
一度他人の手で真っ青に塗られて、『死に損ない』という名前を付けられて、ただでさえ固まってなかったアイデンティティが生贄の方に傾いてたのが、滝に飛び込んだ時に青の塗料が全部はげて、ニュートラルに戻って、泥沼に落ちて真っ黒になって、そこから黒いジャガーとして立ち上がる、ていう流れなんだけど、滝→沼→ジャガー誕生までがスピーディーすぎて本当にかっこよかった。緑に緑が重なる森の中で、褐色の肌と赤い血が生々しくて、自分の皮膚感覚も鋭敏になってくる感じがした。

最初の方の、他の村人に遭遇する時の緊張感と、自分たちの村で焚き火をする時の穏やかさそれぞれの差がすごくて、どちらもとても好きだった。たくさん人が死ぬけど、自分の死も、大事な人の死も、出てくる人たちが見てる側より一歩先に受け入れてる感じが、いつも見てる映画のテンポと違って印象に残る。もっとハリウッド的な『野蛮な宣教師たちVSかっこいいマヤ族、イケてるアクションありありで局地的でも最後は正義の勝ち』ていう戦いを切り取る事もできただろうに、『ひとつの滅びが終わって何かが生まれ、大きな滅びが始まる』ていう感じのラストもよかったと思う。ほぼ半裸のシンプルな主人公たちと比べて、身体の装飾が多くなるほど話が通じなくなっていくんだけど(生贄の祭壇にいる一番やばい奴はゴテゴテの仮面をつけてる)、最後にでかい船からコンキスタドールがくる時の「とうとうルール違う奴が出てきた…」ていう絶望がすごい。やってきた艦隊の禍々しさたるやマヤ族の一番ひどい奴の比じゃなかったから、監督の宗教観はよく知らないけど、キリスト教万歳の映画にばかりも見えなかった。何かがずっと息をひそめたり爆発したりしてる、なんかすごいなあ…と思う映画だった。