ルサチマ

闇を横切れのルサチマのレビュー・感想・評価

闇を横切れ(1959年製作の映画)
4.8
増村の中でもとりわけ政治性の強固な映画ではあるが、いかなる増村映画であっても共通して思い出すのは、映画の登場人物は漆黒の時代下に革命の呼びかけを懸命に続けていた姿だ。川口浩の若く青臭い反転の身振りがカメラポジションを変える契機となるだけでなく、カット割が台詞の音楽的応酬という点からもリズムを相乗効果として生み出していることだ。増村映画の人物たちはひたすらにパンクで他者に影響されまいと存在しながらも全体的な調和を取り続けフレームの密度を高めているようで美しい。


しかしこの映画の冒頭で殺し屋が刑事にタバコの火を求めるのは一体なぜだ。説話的に破綻しながらも紛れもなく殺し屋としての気品を、ただタバコの火を求めるだけで確立させてしまってる。この身振りがクライマックスのトリガーとなることは必然的だとさえ言いたくなる。そんなことが成立するのが映画の魔法なんじゃないか。凄まじいものを見た。
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