あまのかぐや

甘い人生のあまのかぐやのネタバレレビュー・内容・結末

甘い人生(2005年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

一見、韓流ドラマか?と思わせる文字通り甘いタイトルから、ビョンホン作品のなかでは後回しにしてましたが、これ、かなり好き。ぎゅっと濃い韓国バイオレンス。キム・ジウン監督が、わたしのトラウマ映画「悪魔を見た」の前に撮ったという。

序盤の飼い犬ビョン様。中盤の拷問ビョン様。後半は復讐の鬼・ビョン様。

とくに後半ふたつの展開については「これこそが韓国映画!」ってぐらい熱い熱い。

前半の50分ほど、社長の愛人のお守りというか監視をソヌ(ビョンホン)が命じられるあたりのもったりした展開、ソヌが社長の意向を裏切ってからはまるで違う人がつくってる映画なんじゃないかって思いました。

序盤のあれはなんだったのでしょう。社長の愛人を好きになった?同情してしまった?なんとも判断つかない微妙な行き違いからの、ソヌ(ビョンホン)の受難ですが「なんで俺がこんな目に」でしょう。いやまじで。

彼、ボスの愛人に手を出してないですよね?そういう場面、または匂わせがあったかな、もしや自分、見逃したか?なんて思っちゃいました。

あの愛人もこどもみたいで、んー、若い頃の菅野美穂みたい?愛人関係を感じさせない社長との会話、管弦楽団員なんだろうか。とても裏社会のドンの愛人にみえず。ソヌに対しても、社長にたいしても「おじさん」って呼びかけの字幕が違和感しかない・・なんか不思議な立ち位置でした。

あ、そっか。いまふと思いましたが、もしかしてボスはソヌの忠誠を試す意味で愛人の見張りをさせた?寵愛してた部下ソヌに精神的に裏切られたことにご立腹なのかな。

お話の流れに、どこか詰めの甘さはありつつも、アクションシーンはどれも素晴らしかった。拷問されるときの小道具使いも秀逸ですが、それよりもビョンホンの抜群のスタイルでケモノのようにソファや椅子を踏切台にして跳躍し、とび蹴り、回し蹴りなどのアクションは目を瞠るものがある。火のついた角材で1人vs数十人でのアクション、からの脱出シーン。韓国バイオレンスではお約束の鉈、牛刀、血反吐、粘度のある血糊感。これですよこれ。最高オブ最高。

人物でいえば、ソヌと一緒に社長に飼われていた同輩キム・レハの胸糞悪さ、それから敵役のわっかいファン・ジョンミン(キタ!)のぶっこわれ具合、オ・ダルス先輩のオ・ダルス先輩たる存在感。なかなかの俺得な設定。

特に、このファン・ジョンミン。ストーリーに大きな役割を果たしていないような気もしますが、登場シーンから強烈。黒電話で部下をタコ殴り。思わず腰が浮きました。ヒース・レジャーのジョーカーみたいに口の端が裂けてるのと、不快に笑いながら緊縛ソヌをいたぶるシーンとか、姿勢や歩き方もジョーカーっぽい。


しかし、みればみるほどへんな映画です。
途中でソヌが復讐のための武器を調達しに行くシーンがあります。そこまでのお話から浮いているような不思議な場面でした。仲介人のオダルス先輩がでたあたりからおかしくておかしくて、ずっと笑ってた。

また、あれだけの拷問やら生き埋め、それでもなおキレイなソヌにもまた違和感。さらには腹部をナイフでめった刺しされても、銃で側頭部を撃たれても、死なな過ぎる。最後にはターミネーターみたいになってた。

ここまで見ても、どう考えてもソヌがあれだけの目に合う理由が分からない。本人も「わからない、どうして、どうして」という顔をするし、実際、ことあるごとに自分を痛めつける追手に問うのですが、誰もはっきりしたことをいってくれない。

死なない主人公、不条理な展開、もしかしてこれは哲学的な話なのだろうか、それとも。…ラストで、夜景を映す窓に向かってめっちゃ良い顔でスパーリングする無駄に長いシーン。まるでイ・ビョンホンPVのようなソヌを観て「あ、ここまでの話、もしかして全部、夢だったのかな?」という気がしました。社長の犬を続けるなかで「甘い人生・苦い人生」を「一炊の夢」の間に夢想した男の話なのかな?と

すっきりしないし、変な映画だし、もやっとするけど、なぜか何度でも観たくなる不思議な映画。

ところでビョンホンが目に涙をいっぱいにためて感情をおさえるシーンは、まじでグっときますな。雨の中で跪いて、血の涙(に見える)を流す横顔。

イケメン俳優に、道端や海や「う゛お゛ぉぉぉっ」「うあ゛あああっ」ってやたらと叫ばせる邦画は、ビョンホンの抑えた魂の泣きをみならうべき。

そうそう、この映画いろいろ美味しそうな食べ物シーンがでます。ソヌがガトーショコラ食べたり、ソヌと社長が個室で食べてる高級そうな宴会料理(あわび!)、ソヌが張り込み中に屋台の練り物串たべたり、…あと愛人のお供で食べてた蒸篭にはいってたアレ、なんだろうか。
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